トップオピニオン社説いわき信組不正 顧客裏切る悪質な手法の融資【社説】

いわき信組不正 顧客裏切る悪質な手法の融資【社説】

いわき信用組合が架空口座を用いて不正融資を繰り返していた問題で、信組の第三者委員会は調査結果を公表し、ペーパーカンパニーや架空口座を用いた不正融資の総額は計約247億円に上ると認定した。

口座名義を無断で使用

第三者委によると、不正が始まったのは2004年3月。大口融資先の経営が悪化し、損失を出すことを恐れた当時の経営陣が、ぺーパーカンパニーを使った迂回(うかい)融資を行うようになった。07年3月からは架空口座も開設。不正融資は1293件、無断で口座名義を使われた顧客は260人に上る。顧客への裏切りにほかならず、悪質極まりない手法だ。

東日本大震災後の12年1月には、被災地の経済を支えるため信組に200億円の公的資金が注入された。ところが、この資金で不正融資の償却を行っていたのだからあきれるばかりだ。

また元職員による横領事件の懲戒処分を行わず、通常通り勤務させた結果、さらなる横領事件も発生。損失を組合の現金で穴埋めしていたという。これは犯罪の隠蔽(いんぺい)にほかならない。コンプライアンス(法令順守)意識が完全に失われていたと言うしかない。

信組は第三者委の聞き取りに対し、不正融資の件数や金額を過少に報告したほか、昨年11月の不祥事発覚の前後に関係する資料を破棄するなど反省は見られなかった。それどころか、信組の元会長は「いわきの中小企業のため組合がつぶれるわけにはいかない」と不正融資を正当化する始末だ。

一連の不正行為について、第三者委は「有印私文書偽造罪や背任罪などが成立する可能性がある」と違法性を指摘。人事権を掌握する元会長らによるパワーハラスメントもあり、「意見することが難しい状況になっていった」と認定した。元会長ら旧経営陣の責任が厳しく問われなければならない。

東北財務局は信組に業務改善命令を出し、今月30日までに改善計画を提出するよう命じた。信組は経営陣の引責辞任を発表し、外部から新たな役員を招く方針を示したが、うみを出し切って解体的な出直しを図る必要がある。

地方金融機関の不祥事としては、18年に発覚したスルガ銀行の不正融資問題がある。投資用不動産向け融資を巡って相当数の社員が融資審査などの書類改竄(かいざん)や偽造に関与した。

「信頼第一」に立ち返れ

また地銀ではないが、三菱UFJ銀行では貸金庫を巡る窃盗事件が起きている。貸金庫の管理責任者が投資で生じた多額の損失を補填(ほてん)するため、予備鍵を使って現金や金塊を盗み出すなどしたものだ。

経済活動の中心である金融機関の不正の続発は嘆かわしい限りだ。特に地方の金融機関は、地域経済の成長を後押しする役割がある。

地銀各行は長らく低金利環境にあえいできたが、日銀が昨春にマイナス金利政策を解除したことで貸し出しの金利は上昇。収益は大きく改善している。ただ顧客のお金を預かる以上、「信頼第一」の原点に常に立ち返るべきだ。

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