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拘禁刑導入 再犯防止と更生につなげよ【社説】

拘禁刑導入の影響について話す全国保司連盟の吉田研一郎事務局長=5月22日、東京都渋谷区

懲役刑と禁錮刑を廃止し「拘禁刑」に一本化する改正刑法が施行された。これまでの懲罰から「立ち直り」に軸足を移し、刑務作業と指導を組み合わせた柔軟な処遇を目指すものだ。

背景には、高止まりする再犯率の問題がある。受刑者の再犯防止と更生につなげなければならない。

24の矯正処遇課程を新設

1907年の刑法制定以来、新たな刑罰の導入は初めてだ。拘禁刑の導入に伴い、24の矯正処遇課程が新設される。概ね70歳以上で認知症などで自立が困難な「高齢福祉」や、薬物使用歴などがある「依存症回復」といったものだ。

これまで受刑者は主に初犯か再犯かでグループ分けされ、全員が同じように扱われた。このため出所後も社会になじめず、再犯防止につながらない面があった。

2024年版犯罪白書によると、23年の再犯率は47%で検挙者の約半数を再犯者が占めている状況だ。課程の新設は柔軟な処遇によって再犯率を引き下げる狙いがある。

年齢や犯罪傾向、社会性の有無などを基準にきめ細かく対応することは受刑者の更生に不可欠だ。ただ再犯を防ぐには、受刑者に罪の重さを自覚させ、心からの反省を促すものでなければならない。こうした観点からの指導も求められよう。

その意味で刑務官の役割は重要だと言える。必要な専門性を身に付けるための研修などを充実させるとともに、受刑者一人一人の特性に応じた処遇を行うには増員も検討すべきだ。

また、専門家との連携も欠かせない。法務省が23年5~6月に全国の刑事施設で受刑者877人を調査したところ、約12%に発達障害やその疑いがあることが明らかになった。大阪刑務所では昨年12月から、精神保健福祉士や看護師らとの協力で発達障害への医療支援を充実させるモデル事業を進めている。

一方、受刑者の更生には出所後の支援も必要だ。再犯で刑務所に戻った受刑者の約7割が無職だったとのデータもあり、出所後の居場所がなければ再犯率を下げることはできない。

出所者を雇用し、更生に協力する事業者の「協力雇用主」は23年に約2万5000社に達するなど、この10年で約2倍に増えた。しかし、実際の雇用率は3・7%にすぎない。職種も建設業など肉体労働が多く、出所者が就職しても長続きしないケースが目立つ。

拘禁刑導入後は、刑務所にいる時から技能の訓練や内定企業の職場体験などが行われる。企業の側も雇用を増やすなど、出所者が就職できずに再犯に至ることのないよう官民の連携が求められる。

家族の役割も大きい

再犯防止に関しては家族の役割も大きい。11年版犯罪白書には「家族間の信頼や良好な関わりは、非行や犯罪の再発を防止する上で極めて重要な役割を果たして」いると記されている。また少年院で家族と面会した回数が2回以上の場合、再犯率が低い傾向が見られると報告している。

家族の重要性に改めて目を向けたい。

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