トップオピニオン社説沖ノ鳥島 経済的権利守る管理強化を【社説】

沖ノ鳥島 経済的権利守る管理強化を【社説】

沖ノ鳥島(東京都小笠原村)の東約270㌔の日本の排他的経済水域(EEZ)内で、中国の海洋調査船が日本政府に無断で活動した。

日本側の抗議に対し、中国は沖ノ鳥島について「島ではなく岩礁だ」として、日本のEEZを認めず活動を正当化した。不当な主張であり、受け入れることはできない。

「岩」と主張する中国

沖ノ鳥島は東京から1700㌔以上離れた日本最南端の島。中国が周辺のEEZで調査を行うのであれば、日本の同意を得なければならない。

しかし中国は沖ノ鳥島について、国連海洋法条約上、EEZや大陸棚を設定できない「岩」に当たると主張してきた。今回の調査についても「日本が干渉する権利はない」「公海の自由の行使だ」(中国外務省の毛寧報道局長)などと強弁している。

中国の主張が認められれば、日本の国土面積を上回る約40万平方㌔のEEZが失われ、海洋資源などに関する経済的権利もなくなってしまう。沖ノ鳥島周辺のEEZにはレアメタル(希少金属)のコバルトやニッケルなどが豊富に存在している。

また「岩」であれば、中国は周辺海域の調査を自由に行い、台湾有事などの際の米軍展開に備えることができる。昨年9月には、中国軍の空母「遼寧」が沖ノ鳥島近海で400回以上の艦載機の発着艦を実施するなど動きが活発化している。

日本政府は2010年5月、離島保全を図る低潮線保全・拠点施設整備法を制定した。沖ノ鳥島は満潮時に高さと幅が数㍍の二つの島が海面上に残るだけで消滅の恐れがあるとして、政府は護岸工事などを行い保護してきたが、27年度には港湾施設が完成する予定だ。管理を強化し、EEZの権益を守らなければならない。

また12年4月には、国連の大陸棚限界委員会が沖ノ鳥島の北方など太平洋の4海域31万平方㌔を新たに日本の大陸棚として認める勧告を採択したことが明らかとなった。このことも「岩」ではないとの日本の立場を強めたと言えよう。ただ、この時は南方海域については判断が先送りされた。国際社会の一層の理解を得る必要がある。

沖ノ鳥島のように日本の領海やEEZの根拠となる国境離島は473島ある。中国が覇権主義的な動きを強める中、沖ノ鳥島や尖閣諸島(沖縄県石垣市)だけでなく、ほかの離島の周辺海域でも警戒を強めるべきだ。

抑止力強化に離島活用を

特に日本最西端の与那国島(沖縄県与那国町)は、中国が軍事的圧力を強める台湾から約110㌔と近い。中国が22年8月、ペロシ米下院議長(当時)の台湾訪問に反発し、台湾を取り囲む形で行った軍事演習では、中国の弾道ミサイルが与那国島から約80㌔の地点に落下した。

一方、陸上自衛隊は日本最東端の南鳥島(東京都小笠原村)で26年の地対艦ミサイルの発射訓練実施に向けて射撃場整備計画を進めている。他国の軍事拠点などを攻撃できる反撃能力(敵基地攻撃能力)で運用する長射程ミサイルの訓練も行われる見通しだ。抑止力強化に離島の活用が求められる。

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