
稀勢の里(現二所ノ関親方)以来8年ぶり、待望の日本出身横綱の誕生である。日本相撲協会は臨時の理事会を開き、夏場所で2場所連続4回目の優勝を果たした大関大の里の横綱昇進を決めた。
昇進を伝える使者を迎える伝達式の口上では「横綱の地位を汚さぬよう稽古に精進し、唯一無二の横綱を目指します」と決意を述べた。強さと品格を備えた文字通りの大横綱を目指してほしい。
昇進まで13場所は最速
石川県津幡町に生まれた大の里は、新潟県の中学、高校に相撲留学した後、日体大に進学。学生横綱に輝き、2年連続アマチュア横綱という成績を引っ提げ大相撲入りした。令和5年に夏場所で幕下10枚目格付け出しで初土俵を踏んで以来、13場所での横綱昇進は、同じく石川県出身の輪島の21場所を更新。年6場所制となった昭和33年以降で最速となるスピード出世だ。
身長192㌢、体重191㌔の恵まれた体格にスピードと馬力を併せ持つ24歳の大器。師匠の二所ノ関親方は、大の里の横綱昇進について「入門してからしっかり体づくりをして地道にやり続けてきた稽古が少しずつ身になってきたと思う」と言う。
夏場所では全勝優勝を目指したが、千秋楽で横綱豊昇龍に敗れた。この負けを肥やしにさらに強くなることを期待したい。大の里の相撲について八角理事長は「立ち合いで慌てることが少なくなった。踏み込みさえすれば、相手は押せない。そして、相手を見ながら突っ込んでくる相手には、見て受けてから前に出る。ここの安定感が出てきたが伸びしろも感じる」と評価。二所ノ関親方も「まだまだ成長途中でこれからまた稽古を積んで強くなると思う」と指摘。今持っている実力に加え、黙々と努力する才能と「伸びしろ」を考えると、大横綱への期待はいやが上にも高まる。
親方は新横綱に期待することとして「強さも大事だし、星数も伸ばさないといけない。優勝争いもしなくてはいけないが、人の見本になって憧れを持たれるような力士になってほしい。言動も行動も大事になってくるので自覚を持ってこれから横綱としてやってほしい」と述べた。強さと共に品格を備えた横綱になってほしいというのは大相撲ファン、そして多くの国民の気持ちでもある。
次の名古屋場所では、令和3年秋場所で番付に白鵬と照ノ富士が並んで以来、東西横綱がそろう。新しい「大豊」時代の到来を期待する声もある。2横綱が先頭に立って大相撲全体を盛り上げてほしい。
石川県出身の横綱は輪島以来の3人目だ。「天才横綱」「蔵前の星」と言われた輪島も、学生横綱出身で、大相撲に新風を送り込んだ。
被災地に大きな励ましを
大の里も郷土石川への思いは強く、能登半島地震の被災地も訪問した。「大変な状況が続いているが(横綱昇進で)明るいニュースを届けられたと思うので、元気づけるためにも、これから横綱として頑張っていきたい」という。横綱としての活躍は、被災地の人々には大きな励ましになるだろう。