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4月に続き今通常国会で2回目の党首討論が行われた。通常の委員会質疑と異なり、自民、立憲民主、日本維新の会、国民民主の各党代表が党の見解を主張し、論戦できるので注目度は高い。しかし、石破茂首相からの逆質問のない一方通行の質疑に終始したため対決色に欠ける印象だった。
首相の逆質問がない
今回の党首討論は、江藤拓農林水産相の問題発言による更迭を経て開催された。野党側は討論前までに更迭するよう石破首相に求め、実行されなければ農水相不信任決議案を提出することを決めていた。首相は続投を公言していたため、党首討論の場は政権批判のオンパレードになることが予想されていた。
そのため、野党3代表の質疑は準備不足だったとみられる。30分の最長時間を持つ立民の野田佳彦代表は、コメ高騰問題について「家計に占める食費の割合が高くなっている。特にコメ問題が大きい」と指摘した程度で、農政の迷走や首相の責任問題に触れずに次のテーマに移ってしまった。
年金制度改革関連法案を巡って、野田代表は「国会提出が遅れた上に、一番大事な肝に当たる基礎年金(国民年金)の底上げの部分が入っていない」と批判した。一方で「われわれは修正案を示した。5月末までに衆院通過し、6月から参院で審議するため、真剣に修正協議して成案を得ねばならない」と呼び掛けた。
石破首相も「第1党、第2党の責任で結論を得る努力をしていきたい。真剣に行う」と応答した。年金制度は5年に1度、改革するため、今国会で成立させねばならない。立民としては、国民の関心の高い年金問題で実績を挙げれば参院選で政権担当能力をアピールできるとの計算があったろう。ただ、成立ありきで協議を進めれば、国民は選挙対策にすぎないと見抜くことを忘れてはならない。
物価高対策で野田代表は「政府は減税もやらない、給付もやらない、無策だ」と非難した。そこで聞きたかったのは、首相当時に消費税率アップのため、当時の与党民主党の分裂を招いてまで関連法を成立させた野田代表が、何故、食料品に限るが「消費税率を0%とする方針を固めた」と主張するようになったのかだ。石破首相には逆質問をしてほしかった。
維新の前原誠司共同代表は社会保険料改革に絞って質問。今年度予算に賛成したことを述べた上で「教育無償化や社会保険料引き下げを巡り、維新と自民、公明両党は合意したが、3党協議は前進がない。合意を守れなかったら内閣不信任に値する」と迫り、石破首相は「ほごにすることは許されない」と応じた。
外交・安保の討論を
残念だったのは、4月の党首討論で前原代表は、日米安全保障条約の片務性の問題や独立主権国家としての憲法改正の必要性を指摘し、「総理としての一番大きな役割だ」と訴えたが、今回、全く触れなかったことだ。中国、ロシア、北朝鮮、イラン4カ国の連携が強化されるなど日本を取り巻く安全保障環境の急激な悪化への対処策を討論できる時間も確保すべきだ。