トップオピニオン社説露ウ停戦交渉 仲介で話し合いの場を整えよ【社説】

露ウ停戦交渉 仲介で話し合いの場を整えよ【社説】

ロシアのプーチン大統領(左)とウクライナのゼレンスキー大統領(AFP時事)

ロシアのウクライナ軍事侵攻を巡り、停戦に向けた両国の直接協議がトルコのイスタンブールで行われたが、物別れに終わった。

ロシアの称する「特別軍事作戦」は、事実上の国家間の戦争であり、敵同士の交渉には破壊と流血による怨嗟(えんさ)の壁が立ちはだかっている。引き続き第三者の仲介による話し合いの場を整える必要がある。

米露首脳も電話会談

直接協議は早期停戦の実現に程遠い非難の応酬になった。ロシア側がメジンスキー大統領補佐官、ウクライナ側がウメロフ国防相を筆頭とする代表団の協議について、ウクライナ側は「容認できない発言があった」とロシア側を非難している。

ロシア側はロシア軍が占領したウクライナ東・南部4州にわたる地域からのウクライナ軍撤退を要求。反発したウクライナ側に対し、さらに他の地域も軍事制圧すると脅迫したと伝えられている。

ウクライナ侵攻は「戦争ではない」と主張するロシアだが、降伏か、さもなくば戦闘かを迫るような侵略者の態度に見える。しかし、トルコの仲介により3年ぶりに直接協議が実現したこと自体は評価しなければならない。停戦協議を続け、落としどころを探る間に戦闘が抑制される効果につなげたい。

バイデン前米政権の時に勃発したロシアの軍事侵攻は、強い国際批判が巻き起こり、厳しい対露制裁と欧米のウクライナ支援に至った。米国はじめ北大西洋条約機構(NATO)に加盟する諸国がウクライナに対して巨額の武器提供を行い、ロシア軍の進撃を阻んできた。だが、ロシアは制裁を持ちこたえ攻勢を強めている。

ロシアとウクライナが直接協議に及んだのは、一つに米国でトランプ政権が発足し和平を呼び掛けたからだ。直接協議後、トランプ大統領はプーチン露大統領と電話会談し、プーチン氏はウクライナとの間で和平に向けた覚書を交わす用意があることに言及した。停戦条件などについては当事者間で協議することをトランプ氏は認めた。

ロシアは直接協議直後にウクライナに無人機270機以上で攻撃を行っており、軍事力で恫喝(どうかつ)を加えながら占領地域で国境線を画定しようとすることは確実だ。また、ウクライナはこれを断固拒否することは必至だ。ウクライナが「力による現状変更」を認めないことは、領土拡張戦争を否定した国際法に照らせば国際正義にかなう。

だが、ウクライナがロシアから占領された地域を取り戻すのは困難だ。むしろ、これ以上占領地域が広がることのないようにしてウクライナを国家として存続させなければならない。トランプ氏は「このままではウクライナはロシアになるかもしれない」と語り、「勝てない戦争に突入させた」とウクライナのゼレンスキー大統領への非難を厭(いと)わない。

審判役は環境づくりを

トルコ、米国に加えバチカンも新ローマ教皇レオ14世の下で仲介に動く構えだ。両国にブレークを指示する審判役が増えて戦闘の烈度を下げ、話し合いの環境づくりを進めてほしい。

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