
長引く物価高の影響で個人消費は振るわず、今後本格化するトランプ米政権の高関税発動の影響に日本経済は耐えられるのか。政府・日銀が取り組む「賃金と物価の好循環」実現はまさに正念場。対米交渉をはじめ官民挙げて知恵を絞り、米関税の悪影響を最小限に抑えてほしい。
勢いを欠く個人消費
2025年1~3月期の国内総生産(GDP)速報値は、実質で前期比0・2%減、年率換算では0・7%減と4四半期ぶりのマイナス成長になった。
もっとも、マイナス成長は前期の反動や海外IT大手に支払うネット広告の利用料などで輸入が増えたことが主要因で、過度に悲観的に見る必要はない。
むしろ、中身は設備投資が前期比1・4%増と前期(0・6%増)より強まり、住宅投資もプラスに転じるなど内需が回復。GDPの増減に与える影響(寄与度)で、内需はプラス0・7%(前期はマイナス0・2%)と増えているのである。
もちろん、内需に問題がないわけではない。というより、大きな問題がある。物価高の長期化から、GDPの5割以上を占め内需の柱である個人消費が、低迷を続けていることである。
1~3月期も前期比0・04%増とほぼ横ばいで、勢いを欠いたまま。外食などサービス消費は伸びたものの、家計の節約志向の強まりから食料品が落ち込んだ。歴史的な高騰を見せるコメなど、食料品の値上がりが続いているからである。
消費者物価は昨年12月から3%台の上昇を続け、実質賃金は3カ月連続のマイナス。物価上昇の勢いに賃上げのペースが追い付かない中では、消費の本格回復は期待できない。そういう状況に、米政権の高関税政策の影響が加わるのである。
鉄鋼・アルミニウム、自動車への追加関税のほか、相互関税の一律10%分の発動。相互関税の国・地域別の上乗せ分は一時停止されたが、今後、高関税の悪影響が顕在化する。
1~3月期は悪影響はほとんどなかった。上乗せ分の一時停止中に、駆け込み輸出が1~3月期にも自動車で一部見られ、4~6月期には他の分野でも強まろう。GDPにはプラスに作用すると思われるが、その後の反動減の影響が大きく出ないか懸念される。
それが4~6月期に出るか7~9月期に出るか、現時点では定かでないが、いずれにしても輸出企業を中心とした製造業への影響は必至。
輸出や生産の下振れから業績が悪化すれば、旺盛な設備投資も先送りや抑制となり、景気への下押し圧力が強まる。賃上げの原資が削られることで、賃上げ機運の高まりが途切れる恐れもある。賃金が伸び悩めば消費にさらに影響し、堅調な非製造業にも業績への悪影響が及ぶ。「賃金と物価の好循環」実現は瀬戸際にあり、景気後退のリスクも懸念される。
交渉で撤廃や減免目指せ
対米関税交渉では米国自体にも関税の悪影響が降りかかることを説くとともに、そうした自覚を持って日本経済への悪影響を最小限にとどめるべく、撤廃や減免を目指し取り組んでもらいたい。