皇族数の確保のために皇位の男系継承の伝統を崩すことがあってはならない。
安定的な皇位継承などに関する方策について各党・会派が集まり協議が進められているが、歴史的背景を踏まえて結論を出すべきだ。
旧宮家に未婚の男系男子
政府の有識者会議は令和3年に皇族数の確保策として、女性皇族が結婚後も皇室にとどまる、旧宮家の男系男子が養子縁組によって皇籍に復帰するという2案を示した。
女性皇族が結婚後も皇室にとどまる案については、今年4月に開かれた各党派の全体会議で、対象となる女性皇族を「内親王」に限らず「女王」も含めることに異論はなかった。
ただ女性皇族の夫と子に皇族の身分を付与するか否かについては意見が対立している。自民党を中心に、夫や子にも身分を付与すると、将来的に女系天皇につながる恐れがあるとする意見が強い。男系で126代継承されてきた皇位の歴史的な重みを考えれば当然の意見である。
皇族数確保について4項目の提言を発表した読売新聞は「女性天皇に加え、将来的には女系天皇の可能性も排除することなく、現実的な方策を検討すべきではないか」としている。「現実的」に対処することはもちろんだが、女系天皇の容認論にまで突き進む必要はないはずだ。
同じ家族でありながら、皇族と一般人に分かれるのは不自然という意見もあるだろう。その場合は、もし皇族資格を付与したとしても皇位継承資格を持たないという限定が必要だろう。
旧宮家の男系男子が養子縁組によって皇籍に復帰する案については、全体会議で政府側から、旧久邇宮、旧東久邇宮、旧賀陽宮、旧竹田宮の旧4宮家にその候補となる未婚の男系男子が存在することが明らかにされた。
旧宮家男子の皇籍復帰については、これまで一般人であった人が皇族となることに国民一般の理解が得られるか疑問視する消極意見もある。しかし、旧宮家は敗戦後、GHQ(連合国軍総司令部)によって廃止された11宮家の流れをくむ。これらの宮家は、わが国の歴代為政者たちが男系の皇統を守るために設けた。そのような歴史的背景を知らないGHQの指示によって、涙を呑(の)んで皇籍離脱した。
もしこれらの宮家が存続していれば、現在の皇族数の不足や皇位継承の問題などは起こらなかったと思われる。有識者会議では「旧11宮家のいくつかでは男児の誕生が続いている」との発言もあったという。旧4宮家に男系男子が存在することを、われわれは僥倖(きょうこう)と捉え、皇籍復帰をしっかりと進めていく必要がある。
歴史知らせ理解を得よ
旧宮家の方々は、菊栄親睦会などを通し皇室とは特別な絆で結ばれてきた。一般人という立場であったとしても、かつての宮家の一員であるという自覚は保持していたはずである。
旧宮家について、その歴史的背景とりわけGHQによる廃止の事情などを知る日本人は多くない。政治家やマスメディアは、一般国民の理解を得られるか疑問という前に、旧宮家の歴史を正しく知らせる責任がある。