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米中関税協議 トランプ流ディールに対処を【社説】

記者会見を開くベセント米財務長官(右)とグリア米通商代表部(USTR)代表=12日、スイス・ジュネーブ

自由貿易体制への挑戦かと国際批判を巻き起こしたトランプ米大統領の関税政策だが、報復合戦を演じた中国と米国の交渉が一つの合意を得た。米国の貿易赤字減らし、製造業再生を目的としたトランプ氏の相互関税政策は破天荒な手法に違いないが、結果を生みつつある取引を直視して対処すべきだ。

115%引き下げで合意

トランプ政権は貿易相手国に同水準の関税を課す相互関税政策を打ち出し、全輸入品に一律10%を課した上で、相手国・地域別に上乗せした税率を4月2日に発表した。この中で中国からの輸入品に対して34%の関税上乗せを発表すると、中国との間で報復が過熱し、累計で米国は中国に対し145%、中国は米国に対し125%に達した。

米中対立を背景に展開した米中関税合戦は、一見妥協なく進んだ。しかし、世界1位と2位の経済大国が互いに100%を超える相互関税を賦課する影響は大きく、株価は米国はじめ各国で暴落し、景気後退も予想されている。

それだけにスイスのジュネーブで行われた米中関税協議で「米中双方が115%引き下げる」ことで合意すると、12日の米ニューヨーク株式相場は急反発し、ダウ工業株30週平均が1160㌦高の4万2410㌦となった。関税合戦が「新冷戦」を背景とした本格的な経済戦争ではなく、トランプ氏のディール(取引)であり、115%もの部分が話し合いによる相互の妥協で下げられたことへの驚きもあっただろう。

トランプ政権としてはあくまで「不公平の是正」を求めている。実際、米政権は同盟国に対しても相互関税を導入しており、貿易交渉は多くの場合、同盟国の方がタフな交渉相手だとトランプ氏は認めている。

ただ、中でも最も不公平な相手国が中国だという認識が米国側にはある。中国の対米貿易黒字は2470億㌦(2023年)で「圧倒的に大きい」と米財務省は指摘している。

米中合意に際し、ベセント財務長官は「巨額の対中貿易赤字の解消につながる物品購入協定を結ぶ可能性がある」と今後の中国との交渉に期待した。関税合戦から1カ月ほどで落としどころが探られたが、米国内にも妥結を急ぐ事情もあろう。トランプ政権が2度登場するほど製造業の衰退に不満を持つ有権者が増しており、安い中国製品に市場を席巻される怒りが米国を相互関税政策へと突き動かしたことは確かだ。

一方、相互関税発表後米国株は暴落し、ダウ工業株は3万8000㌦の大台を割り込んだ。政権100日の節目にトランプ氏の支持率を不支持率が上回った。民主党支持者からのトランプ政権への不評に加え、株価の影響を受ける確定拠出年金制度「401(k)プラン」を利用する有権者を意識すれば、株安や関税措置による物価のさらなる上昇を長引かせるわけにはいかない。

日本も有利な妥結を

トランプ政権は関税交渉の結果を生みつつあるが、実績を有権者に示さなければならず、わが国も90日の交渉期間中に有利な妥結を見いだすべきだ。

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