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新ローマ教皇 平和と調和へ導きを期待【社説】

新しいローマ教皇にロバート・フランシス・プレボスト枢機卿が選ばれ、レオ14世の教皇名で就任した。うち続く戦争や価値観の揺らぎという世界的問題の解決に、初の米国出身の教皇への期待は大きい。

「対話と慈愛」目指す

フランシスコ教皇の死去を受け、教皇選挙「コンクラーベ」での通算4回目の投票で選ばれた。バチカンのサンピエトロ大聖堂のバルコニーに姿を現した新教皇は、数万人の信者を前に「対話と開かれた慈愛に満ちた教会を目指したい」と述べ、弱者に寄り添った前教皇の路線を引き継ぐ意向を示した。

新教皇は23年余り南米ペルーの宣教師として活動し、貧困問題などを抱える南米の事情に精通していると言われる。レオ14世を名乗るのは、教会から出て積極的に社会活動を行ったレオ13世(在位1878~1903年)の後継としての意識からとされる。混迷する世界に対する発言や行動が注目される。

約14億人の信者を抱える世界最大のキリスト教宗派、カトリック教会の最高指導者だ。国際社会に対し最も大きな影響力を持つ宗教者の一人である。世界各国の報道関係者数千人を前にした演説では「私たちは、戦争という枠組みを拒否しなければならない」と述べ、戦争を容認しない考えを強調した。

さらに「平和は、われわれが他者とどう向き合い、耳を傾け、語り掛けるかという一人ひとりの行動から始まる。その意味で、意思疎通の在り方が根本的に重要で、言葉による戦争に『ノー』と言わなければならない」とも訴えた。

新教皇は就任後初の外国首脳との会談として、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話で話し合った。ゼレンスキー氏によると、会談は「大変温かく、真に実質的」だった。平和構築への新教皇の積極的な姿勢を示すもので、ウクライナとロシアの停戦・和平に向け、政治的な利害を超えた高い次元からの解決につながることを期待したい。

パレスチナ和平実現への関与も求められる。戦争の背景に歴史的宗教的な感情もあることを考えると、問題解決には宗教者の働き掛けが必要だ。

急速に進歩し、世界で利用が拡大しているAI(人工知能)についても「全ての人々のために活用され、人類全体に利益をもたらすためには、責任と判断力が必要だ」と語り、利用する人間の側の倫理観や判断力の重要性を強調した。

新教皇は前教皇の改革路線を踏襲する一方、保守的な側面も併せ持つ。過去にはLGBTなど性的少数者の権利について慎重な発言をし、ジェンダー教育にも反対した。弱者に寄り添い、現実の諸問題に対処することは、流動的な世俗的価値観におもねるものではない。新教皇の揺るがぬ姿勢は人々の進むべき道標となるはずだ。

難問に適切な対処を

カトリック教会は、聖職者による未成年者への性的虐待問題で信頼を失い、特に欧米で教会離れが進んだ。聖職者独身制の見直し、女性聖職者問題などの難問も抱える。新教皇がこれらに適切に対処し、世界を平和と調和に導くことを期待したい。

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