トップオピニオン社説中露首脳会談 「蜜月」演出も一枚岩にあらず【社説】

中露首脳会談 「蜜月」演出も一枚岩にあらず【社説】

中国の習近平国家主席は旧ソ連の対独戦勝80年記念日に合わせてロシアを訪問し、プーチン大統領と首脳会談を行った。両首脳の対面会談は第2次トランプ米政権発足後初めて。

反米連携での結束誇示

プーチン氏は「厳しい戦争中に築かれたわれわれのきずなは、現在の協力関係の基盤の一つとなっている」と述べて第2次世界大戦の歴史を強調し、両国の連携をさらに強化したい姿勢を示した。また「中露関係は史上最高レベルに達した」と誇示し、9月に中国で開催される「抗日戦争勝利記念日」の式典への出席を約束した。

一方、習氏は「一国主義や強権的ないじめ行為に直面している」と暗にトランプ政権を批判。プーチン氏も「一国主義と制裁の乱用に共に反対していく」と応じ、反米で中国と足並みを揃(そろ)える姿勢を明確にした。

また習氏はロシアと「平等で秩序ある世界の多極化と経済のグローバル化」を進めたいと語り、グローバルサウス(新興・途上国)を取り込んで米国中心の世界秩序を打破する考えを示した。中露両政府は投資促進などの協定に署名し、関係深化をうたった共同声明を発表した。

習氏は他の20カ国以上の首脳と共に、モスクワ中心部の赤の広場で開かれた記念式典の軍事パレードを観覧。プーチン氏の狙いは、ウクライナ侵略と第2次世界大戦の勝利を重ね合わせ、国民に団結と結束を呼び掛けるとともに、欧米から制裁を受ける中でもロシアが国際的に孤立していないことをアピールすることにあった。

中露両首脳は強固な関係と反米連携での結束を誇示したが、内実は微妙なものがある。ウクライナとの停戦協議でトランプ大統領が対露融和の姿勢を見せていることから、あるいは米国を自らの側に引き留めようとプーチン氏が対米譲歩に出ることで、ロシアが米国に取り込まれたり、米露の接近が進んだりすることを習氏は警戒している。

一方、貿易戦争で米国に譲歩せず、強硬な姿勢を崩さない中国だが、対米輸出の大幅減による経済の悪化から、米国との関税協議に応じる柔軟な姿勢に転じつつある。米中の和解や関係改善が実現した場合、今後経済支援や軍事関連物資の提供などでロシアが中国に期待することが難しくなる事態をプーチン氏は恐れているはずだ。

北朝鮮を巡っても互いの立場にはズレがある。ロシアはウクライナとの戦いで不足する弾薬や兵士の確保を北朝鮮に頼っており、北朝鮮も見返りとしてロシアからの軍事技術の提供を望み、急速に両国の関係強化が進んでいる。だが長年北朝鮮の後ろ盾を自認してきた中国は、露朝接近に不快感を抱いている。さらに新たな天然ガスパイプライン「シベリアの力2」の建設に関しても、中露の協議は難航しているもようだ。

権威主義枢軸の分断図れ

かように表向き「蜜月」を演出する中露だが、決して一枚岩ではない。日本はじめ自由主義諸国は、両国関係の実態を冷静に見極める必要がある。中露朝の思惑や立場の相違を突く巧みな外交で権威主義枢軸の分断と弱体化を図るべきだ。

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