トップオピニオン社説コロナ5類2年 感染症危機への備え万全に【社説】

コロナ5類2年 感染症危機への備え万全に【社説】

新型コロナウイルスが感染症法上の5類に移行してから2年が経過した。政府は「次の感染症の危機」をにらんだ体制整備を進め、4月には専門家組織「国立健康危機管理研究機構(JIHS)」が発足した。

初動対応が遅れた新型コロナの感染拡大を教訓に、感染症危機への備えを万全にしなければならない。

「日本版CDC」を設置

JIHSは米国の疾病対策センター(CDC)をモデルとし、国立感染症研究所(感染研)と国立国際医療研究センター(NCGM)を統合して設置された。約3900人の職員が平時から感染症の情報収集やリスク評価を行い、科学的な知見を政府に報告。感染拡大時には政府と連携し、薬やワクチンなどの開発につなげるほか、診療対応の手引も策定する。

既に、風邪などの急性呼吸器感染症について観測を始めている。JIHSの脇田隆字副理事長は「幅広くデータを取ることで、未知の感染症発生など異常を感知できる」としている。

新型コロナに感染した人の中には、現在でも後遺症に苦しむケースが見られる。未知の感染症を早期に発見し、迅速なワクチンの開発や治療法の確立によって国民の命と健康を守らなければならない。

日本では1970年代以降、相次ぐ予防接種禍の集団訴訟で国が敗訴し、ワクチン政策に消極的になった。平時の研究体制が整備されていなかったため、コロナ禍の際には開発の遅れを招くこととなった。

パンデミック(世界的大流行)を通じ、ワクチンは国の安全保障にも関わる重要な戦略物資であることが示された。未知の感染症に備え、開発能力向上のための環境整備を進めることは政府の大切な役割だ。

一方、研究機能と病院機能を併せ持つJIHSは、研究部門が発見した治療薬の候補物質の効果について、患者を受け入れる病院で確認することができるようになる。さらにJIHSには、災害派遣医療チーム(DMAT)の事務局も置かれる。パンデミックや災害などの際に応援派遣を行い、医療従事者の不足を補うためだ。

コロナの5類移行後、政府は感染症危機対応の体制充実を図ってきた。対策の司令塔として内閣感染症危機管理統括庁が2023年9月に発足。24年7月には、重大な感染症への対応をまとめた「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」を初めて抜本改正し、「平時の備え」を重視するとした。危機管理体制の強化へ不断の取り組みが求められよう。

緊急事態条項の創設急げ

未知の感染症に効果的に対応するには、憲法を改正し、ロックダウン(都市封鎖)などの私権制限が可能となる緊急事態条項を創設することも喫緊の課題だと言えよう。

憲法改正を党是とする自民党は、昨年10月の衆院選で大敗して少数与党に転落した。しかし80年近く前に連合国軍総司令部(GHQ)占領下で制定された憲法のままでは、目の前の危機に十分に対処することができない。石破茂首相は改憲の必要性を訴え続けるべきだ。

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