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川崎市川崎区の民家でバッグに入れられた遺体が見つかった事件で、神奈川県警は死体遺棄容疑で民家に住む白井秀征容疑者を逮捕した。遺体の女性、岡崎彩咲陽さんは昨年12月に行方不明になる前、白井容疑者から嫌がらせや付きまといを受けたと周囲や警察にたびたび相談していた。最悪の事態を防ぐことはできなかったのか。
後手に回った警察の対応
岡崎さんの遺体は、先月末にストーカー規制法違反容疑で白井容疑者宅を家宅捜索した際、床下から見つかった。ボストンバッグに入れられ一部白骨化した状態で、燃やされた痕があった。死後1カ月以上が経過していたという。
岡崎さんは行方不明になる直前の昨年12月、県警に計9回通報していた。だが、県警が白井容疑者から事情を聞いたのは行方不明になった後だった。また行方不明になった直後、身を寄せていた祖母宅の窓ガラスが割られているのが発見されたが、県警はすぐには証拠の採取をしなかった。
昨年12月から先月下旬まで、捜査の主体は防犯対策や家出人捜索などを担当する生活安全部門だった。犯罪捜査を行う捜査1課に事件が知らされたのは遺体発見後だ。なぜ、これほど対応が後手に回ったのか。警察がもっと危機感を持って臨んでいれば最悪の結果は避けられたかもしれない。
警察にストーカー被害を相談していた女性らが命を絶たれるケースは後を絶たない。1999年の「桶川ストーカー殺人事件」では、被害を警察に相談していた女子大生が刃物で刺殺された。事件の翌年、付きまといなどへの禁止命令を出せる規制法が成立した。
規制法は規制対象にならない行為などが問題になるたびに改正され、これまで2013、16、21年と3回見直されている。しかし23年1月には福岡市のJR博多駅近くの路上で、女性会社員が元交際相手の男に刃物で胸などを刺されて死亡する事件が発生するなど凶行を防止できていない。23年の規制法違反の検挙は過去最多の1081件。全国の警察に寄せられた相談は2万件近い。
ストーカーの増加は刑の軽さも要因だと言えよう。欧米諸国では刑法の中に付きまとい罪を加えるのが一般的で、ドイツでは最高刑が懲役10年だ。これに対し、規制法を運用する日本は1年以下の懲役にすぎない。ストーカー防止には厳罰化を進める必要がある。
治療義務付ける仕組みを
また警察庁は昨年3月、規制法に基づく禁止命令を受けた加害者全員に連絡して近況を把握するとともに、精神的治療の有効性などを徹底して伝えるよう、全国の警察に通達を出した。加害者が精神疾患の影響でストーカー行為に走るケースも少なくない。
ただ警察は23年、1747人に受診を求めたが、治療を受けたのは176人にとどまっている。特に、暴力や殺人にまで及ぶ恐れがある「ハイリスクストーカー」は治療を受けないことが多いという。悲惨な事件を防ぐため、治療を義務付ける仕組みも検討すべきだ。