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沖縄県・尖閣諸島沖で領海に侵入した中国船から飛び立ったヘリコプター1機が、尖閣沖の上空を約15分間飛行した。
領海侵入や領空侵犯そのものも断じて容認できないが、中国側は日本の民間航空機が「釣魚島(尖閣の中国名)の領空を侵犯した」などと強弁している。言語道断の対応だ。
昨年8月以来4回目
尖閣周辺で当時、日本の民間小型機が飛行していたのは事実だが、それを中国に批判されるいわれはない。尖閣は日本固有の領土だ。
尖閣は日本政府が現地調査を行った上で、1895年1月に領土に編入した。この調査によって当時の清朝の支配が及んでいないことも確認されている。中国が尖閣の領有権を主張するようになったのは、東シナ海に石油埋蔵の可能性が指摘された後の1971年からだ。中国の主張が不当であることは論をまたない。
それにもかかわらず、尖閣周辺では中国海警船による領海侵入が常態化している。今回の領空侵犯も、その延長線上に発生したものだ。中国機による領空侵犯は、昨年8月に長崎県・男女群島沖で起きて以来4回目。尖閣周辺では3回目だ。
中国外務省は「日本の右翼分子が操縦する民間航空機が釣魚島の領空を侵犯した」などと述べ、中国海警局は日本の民間機を発見したためヘリで警告したとしている。日本に非があるかのような主張は到底受け入れられない。
尖閣周辺で頻繁に活動し、日本の主権を侵害している海警局は2018年7月、準軍事組織、人民武装警察部隊(武警)に移管され、21年2月には海警船の武器使用について明記した「海警法」が施行された。海警局を軍と一体化させ、尖閣に対する日本の実効支配を崩そうとする狙いがうかがえる。
中国は武力攻撃に至らない範囲で存在を誇示する「グレーゾーン事態」を重ねることで尖閣奪取を目指しているとみていい。これに対処するには、中国の領海侵入に対応する海上保安庁が、海上自衛隊との連携強化を進めなければならない。尖閣に公務員を常駐させるなど実効支配の強化も不可欠だ。
一方、中国経済が不動産不況で低迷する中、トランプ米政権は今年4月、中国からの輸入品に145%の追加関税を課した。中国が国内の不満をそらすため、対外強硬策を取る可能性も想定する必要がある。
中国は3月の全国人民代表大会(全人代)で、今年の経済成長率目標を「5%前後」に据え置く一方、国防費は前年と比べ7・2%増やして軍拡路線の継続を鮮明にした。4月には台湾の周辺で軍事演習を行い、中国が「独立勢力」と敵視する台湾の頼清徳政権への威圧を強めている。
民主主義国との連携を
日中間には尖閣問題のほか、中国による日本産水産物の全面禁輸や邦人拘束などの懸案が山積している。
現在のところ、中国の誠意ある対応は期待できない。日本は同盟国の米国をはじめとする民主主義国との連携を深め、中国に対抗すべきだ。