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こどもの日 家庭再建の鍵【社説】

きょうはこどもの日。日本の未来を担う子供たちの健やかな成長と幸せのため、われわれがすべきことは何かを改めて考えたい。

社会を明るく照らす存在

総務省が発表した2024年10月1日現在の人口推計では、わが国の総人口1億2380万2000人のうち、15歳未満は1383万人で前年と比べて34万3000人減少。人口全体に占める割合も11・2%と過去最低となった。

地方都市などに行くと端的に感じられることだが、子供の数が減ると何より活気と明るさがなくなる。子供の存在そのものが社会を明るく照らす希望の光である。「子宝」は親にとっての言葉であったが、社会にとっても宝である時代となった。

日本は1994年に「子どもの権利条約」を批准。2022年に子供施策を社会全体で推進していくための包括的な基本法として「こども基本法」を成立させ、23年4月には「こども家庭庁」が発足した。

こども家庭庁は、子供を取り巻く施策の一元化を図る司令塔と位置付けられている。子供の福祉、子育て支援や少子化対策まで子供に関するさまざまな課題を幅広く担当し、子供の視点に立って「こどもまんなか社会」の実現を目指す。

子供を一個の人格として捉え、その人権を尊重するのは当然のことである。しかし、権利には必ず責任が伴う。子供の人権を強調するあまり、正しく教育することに及び腰になってはならない。

子供の視点に立つことも、大人の思い込みを排し、気持ちに寄り添うという点では必要なことだ。だが、子供に迎合するものであってはならない。まだ判断力が乏しいのだから、愛情を持って毅然(きぜん)と指導すべきだ。

こども家庭庁は、当初「こども庁」の名で発足する予定だったが、家庭の役割の大きさに鑑みて「家庭」が加わった。

実際、子供を巡るさまざまな問題は、親の子育て力や家庭力の低下が大きな原因と考えられる。23年度に全国の児童相談所(児相)が対応した虐待相談件数は、前年度より1万666件増えて22万5509件となり、これまでで最多となった。こども家庭庁はその対策として、子供の一時保護などに当たる児童福祉司を26年度までに910人程度増員し7390人とする目標を掲げている。

親に育児学ぶ機会提供を

親たちが未熟になった分、社会がそれを補わざるを得ず、対策を急がなければならないが、根本的かつ望ましい解決とは言えない。親も子供を育てながら親になっていく。こども家庭庁は妊産婦や子育て世帯からの相談に乗る「こども家庭センター」の設置を市区町村に呼び掛けているが、問題が起きる前に親が子育てについて学ぶ機会を提供する必要がある。

厚生労働省によると、今や日本の子供の7人に1人、ひとり親家庭の子供は2人に1人が貧困状態にある。この問題は格差の拡大以上に、「家庭の多様な在り方」が吹聴される中、伝統的価値観が揺らいでいることが背景にある。家庭再建こそ子供の福祉の鍵である。

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