トップオピニオン社説憲法記念日 独立守る国防規定を憲法に【社説】

憲法記念日 独立守る国防規定を憲法に【社説】

日本国憲法が施行されて78年を迎えた。今年戦後80年を迎えるわが国は、講和条約により独立を回復してから73年を経るが、ポツダム宣言受諾のまま軍を持っていない。周辺地域の軍事的脅威は高まっており、独立国にふさわしい国防規定を憲法に明記すべきだ。

占領政策の影響が存続

中国、ロシア、北朝鮮のいずれも軍拡に余念のない国に囲まれる日本に、同盟国米国は防衛費増額など一層の国防努力を求めている。国連安保理常任理事国であるロシアのウクライナ軍事侵攻によって安保理が機能せず、もう一つの常任理事国である中国は台湾を「統一」しようと軍事的威嚇を強めている。

わが国の今年度の防衛予算は8・7兆円と過去最高だ。しかし、自衛隊すら条文にない憲法の改正論議は低調だ。昨年、石破茂首相が打った衆院解散・総選挙で改憲政党の自民党が大敗し、少数与党となったこともある。石破氏の改憲への意欲は見られず、党首討論で改憲派の前原誠司日本維新の会共同代表から追及される始末だ。

国会の改憲発議や国民投票などに関する改憲手続き法を整備したものの、少数与党の自民は衆院憲法審査会の会長ポストを立憲民主党に譲った。立民は民主党以来の「論憲」路線で、改憲を含めた憲法論議に応じはするが、改憲原案の取りまとめなど実行に移すことは極めて消極的だ。石破政権の下で改憲の機運が失われたのは残念である。

第2次世界大戦に敗れて極東軍事裁判で戦勝国に裁かれ、主権なき占領期に日本国憲法は制定された。国民の安全と生存を「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」保持するとした前文、戦力不保持を定め、交戦権を否定する9条を持つ憲法は、実質、「占領基本法」だ。占領期に朝鮮戦争が勃発すると米国は再武装を求めている。

しかし、講和条約により独立を回復してなお日本国憲法の条文は全く変わっていない。軍国主義の除去、軍の完全解体などを要求したポツダム宣言を反映した連合国軍総司令部(GHQ)の占領政策の強い影響が戦後の日本に延々と存続した。

軍がなければ徴兵も戦争もないと、戦争で甚大な被害を受けたばかりの国民に強い反戦世論があったことも確かだ。“新憲法”は「平和憲法」と宣伝され、学校教育の柱となった。

だが、アジア太平洋地域の軍事情勢は80年前とは打って変わっている。中露朝が核保有し、韓国や東南アジア諸国も独立国として軍を持つ。わが国だけ軍がないのは異常であり、危険な状況ではないか。

高性能の兵器を装備する自衛隊は、海外では軍の扱いを受ける。しかし、憲法に明文規定がなく、交戦権および武力行使を否定した憲法9条に基づいて軍ではないようにされている。日米安保条約を結んで在日米軍を置くことによって日本は安全保障を糊塗(こと)してきた。

国力にふさわしい改正を

戦後80年を迎えてなお歪(ゆが)んだ敗戦状態を残し続けてはならない。9条を改め、独立を守る国防規定を明記し、今日の繁栄した民主主義国日本の国力にふさわしい憲法に改めるべきだ。

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