トップオピニオン社説日米財務相会談 米は為替目標求めぬ姿勢貫け【社説】

日米財務相会談 米は為替目標求めぬ姿勢貫け【社説】

ベセント米財務長官(左)と握手する加藤勝信財務相=4月24日、ワシントン(財務省提供・時事)

日米財務相が米ワシントンで会談し、米国の関税政策を巡る交渉に関連して「為替相場は市場で決定される」との合意を再確認した。米国の為替目標を求めぬ姿勢をまずは評価するとともに、市場の動揺回避へ、米国は今後もそうした姿勢を貫いてほしい。

背景に大幅な対日赤字

加藤勝信財務相はベセント米財務長官との会談で、為替問題などについて協議。加藤氏は会談後の記者会見で、米国側から為替目標の設定や為替管理の枠組みなどに関する要求はなかったと明らかにした上で「為替相場は市場で決定し、過度な変動は悪影響を与えることについて認識を再確認した」と述べた。

トランプ米政権から日米関税交渉と絡め何らかの要求があるのではないかと懸念されたが、ひとまず安心という状況。会談前日にも、トランプ大統領が「日本は常に円安のために戦ってきた」と発言して円安への不満を改めて表明していただけに、ベセント氏の対応に日本側の安堵(あんど)感も大きかったに違いない。

日本は為替に関して言えば、ここ数年は円安を誘導するどころか、その反対に円安・ドル高の進行を阻止して異常な物価高を抑えるべく、数兆円の円買い・ドル売りの介入をたびたび実施してきた。明らかにトランプ氏の事実誤認である。

もっとも、トランプ氏が円安に言及するのも無理からぬ理由がある。大幅な対日貿易赤字の存在である。

わが国の2024年度の貿易収支(通関ベース)は5兆2217億円の赤字だが、対米国では9兆53億円の黒字。輸出額は21兆6482億円と過去最高になった。米国は日本にとって最大の輸出先なのである。対米輸出の稼ぎ頭は総額の約3割を占める自動車で、24年度は6兆1920億円とトランプ政権1期目の最終年に当たる20年度に比べると1・8倍に伸びた。

それだけに、ベセント氏が為替目標を求めなかったことに安心ばかりしてはいられない。加藤氏が米国の高関税措置に関して「極めて遺憾」として見直しを申し入れたことに対し、ベセント氏から具体的にどのような要求があったかについて加藤氏はコメントを控えた。今後の日米協議での難しさを暗示するものとみて間違いあるまい。

日本としては為替目標はもちろん、高関税措置もブーメランとなって米国のインフレ高進や景気悪化のリスクを招くことを丁寧に説き続けることが重要であろう。

LNG拡大などで協力を

赤沢亮正経済再生担当相がベセント氏らと行う2回目の担当閣僚協議では、トランプ氏が意欲を示すアラスカ州の液化天然ガス(LNG)開発事業の日米共同での推進やLNGの輸入拡大といった日米双方でウィンウィンとなるものについては積極的に応じたい。

ベセント氏は高関税の応酬になっている中国との関係について「米中ともに緊張を緩和させる必要がある」との考えを示す。トランプ氏が打ち出した相互関税の上乗せ分を、市場の動揺から約半日で撤回させた、穏健派としての堅実な手腕を引き続き発揮してもらいたい。

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