トップオピニオン社説昭和の日「大いなる時代」から学ぶもの【社説】

昭和の日「大いなる時代」から学ぶもの【社説】

昭和天皇御巡幸、書籍化にあたり表紙用の画像として使用された写真

きょうは「昭和の日」。昭和天皇の誕生日である。

「激動の日々を経て、復興を遂げた」時代を顧み、日本の将来を考えたい。

今年は改元100年目

今年は昭和改元から100年目ということで、さまざまな角度から昭和が回顧されている。しかし、そもそもなぜ「昭和100年」などと言われるのか。

かつて昭和43年は「明治100年」に当たり、政府主催の「明治百年記念式典」が日本武道館で、昭和天皇、香淳皇后をはじめ皇族方御臨席の下、盛大に挙行された。式辞を佐藤栄作首相(当時)が述べ、日本が近代国家として新しく出発した「大いなる明治」を振り返り、さらなる発展を期した。

今回はそのような式典も予定されておらず、明治に比べると昭和は敗戦という暗い影も強い時代である。しかし、昭和も明治に劣らぬ「大いなる時代」であったことは間違いない。「昭和100年」として振り返る理由はそこにある。

明治時代は開国以来の富国強兵策によって日清・日露の戦争を勝利。アジアでいち早く近代化を成し遂げ、西欧列強の植民地支配を崩すきっかけをつくった。その歴史の激流の中で、帝国主義国家の道を歩み昭和の大戦へと突き進んで敗戦を迎えた。しかし人々は焦土から立ち上がり、明治、大正の時代には実現できなかった経済大国をつくり上げたのである。

このように世界史の舞台で日本が躍動した理由は、東西の文明が出会った歴史的な背景も大きいが、何より日本人が世界の歴史に影響を与えるものを持っていたからにほかならない。それを可能とする気概、武士道に基礎を置いた精神性があった。アジアの国々はその日本に続いて近代化、産業化を進めた。

しかし今日、日本を訪れる外国人は日本人のホスピタリティーに感動する一方、日本を侍の国と思っていたのにそれが見られないことに驚きと失望を抱く人もいる。ただ、スポーツの世界にはその精神性が今日も生きているのは心強い。米野球殿堂入りを果たした元大リーガーのイチローさんなど、世界のトップで戦う人たちにそれを見ることができる。彼らを見習い、明治、昭和の大いなる時代をつくり上げた日本人の気概を取り戻す必要があるのではないか。

戦後の復興は、昭和天皇の終戦の御聖断から出発した。一身を顧みず「万世の為に太平を開かん」とされたことで、本土決戦の悲劇は避けられ、未来への種が残された。国家・国民を思う無私の御決断によって戦後の復興が開かれたことを忘れてはならないだろう。

日本が失った良さとは

ひところ昭和という言葉は、アナログ的なもの、古く遅れたものを揶揄(やゆ)する時に使われた。そういう使い方は最近あまりされなくなり、昭和は懐かしさを覚えるものとなっている。いわゆる昭和レトロが、若い世代の人気を集めているという現象も伝えられる。昭和を知らない若い世代が不思議な温もりを感じるという。

今の日本が失った昭和の良さとは何なのか。改めて問い直す価値のあるテーマだ。

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