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グーグル排除命令 公正な競争環境を整えよ【社説】

公正取引委員会は今月、米グーグルが自社の検索アプリを搭載するようスマートフォンメーカーに強要していたとして、独占禁止法違反(不公正な取引方法)でグーグルに違反行為の取りやめなどを求める排除措置命令を出した。

「GAFA(ガーファ)」と称される巨大IT企業に対する排除措置命令は初めてだ。公正な競争環境の整備につなげる必要がある。

検索アプリ搭載を強要

排除措置命令は市場の競争環境回復のため、速やかに違法行為をやめさせるもの。行政調査に基づく措置の中で最も重く、命令に従わない場合、罰金などが科される。

公取委は2023年10月、独禁法違反容疑でグーグルへの審査開始を発表。デジタルプラットフォーム事業者の事案では、初期段階で概要を公表する初のケースだった。

グーグルは遅くとも20年7月以降、基本ソフト(OS)「アンドロイド」端末のメーカーがアプリストア「グーグルプレイ」を搭載する際、初期設定として検索アプリ「グーグルサーチ」などをスマホ画面の有利な位置に配置するよう求める契約を結んでいた。

また、検索連動型広告サービスによる収益の一部を端末メーカーなどに支払う条件として、競合事業者の検索アプリをスマホに搭載しない契約を締結。検索市場から競合他社が排除される状態となっていた。

昨年1月時点のスマホ検索サービスの国内シェアは、グーグルが81・1%を占めている。公取委は利用者の利便性を考えると、スマホメーカー側がグーグルの要求を拒むのは難しい状況にあり、独禁法が禁じる「拘束条件付き取引」に当たると判断した。今回は排除措置命令としては初めて弁護士などの第三者が再発防止の取り組みを5年にわたって監視し、履行状況を報告することも命じた。

高いシェアを背景に違法行為によって市場をゆがめることは許されない。他社のサービスを排除すれば、日本企業の技術革新や成長を妨げることにもなりかねない。

今回の命令に当たって、公取委は海外当局の対応も参考にしたという。米国では連邦地裁がグーグルによる検索市場での反トラスト法(独禁法)違反を認め、司法省もウェブブラウザー(閲覧ソフト)アプリ「グーグルクローム」の事業売却を求めている。

高性能なサービスを期待

日本国内では、スマホのアプリストアなど4分野で巨大IT企業を規制する新法が今年12月までに全面施行される。公取委は今月、新法施行も念頭に巨大IT企業の問題に対応する部署を新設した。監視体制を強化し、独禁法違反には速やかに対処すべきだ。

グーグルが検索機能で「1強」とされる状況は、生成AI(人工知能)の登場で変わりつつある。検索システムの中には生成AIの機能を搭載する動きも出ている。

今回の命令で検索市場における健全な競争が行われ、高性能な検索サービスが開発されることを期待したい。

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