トップオピニオン社説コメ輸入拡大 米価の高騰対策は当面必要だ【社説】

コメ輸入拡大 米価の高騰対策は当面必要だ【社説】

政府はトランプ米政権との関税交渉でコメの輸入拡大を検討に加えた。もともと国内で自給可能なコメについては両国の貿易交渉で最低輸入量(ミニマムアクセス)に限る「聖域」と位置付けられてきた。

しかし、昨年来のコメの高騰は国民生活に負担となっており、コメの増産を図る農政施策と併行して適度な輸入拡大も考える必要がある。

小売価格は高止まり

コメの価格高騰を抑えるために政府は備蓄米を放出したが、小売価格は高止まりしたままだ。農林水産省の調べでは、全国のスーパーで今月7~13日に販売されたコメ5㌔当たりの平均価格は15週連続で値上がりし、過去最高値を更新して4217円になった。

2000円前後だった主食であるコメの値段が2倍以上になり、備蓄米放出という政府の対策が対策になっていないことは深刻だ。

コメの価格高騰は一昨年の不作が引き金となった。店頭からコメが消えるなど需給バランスが崩れた。

供給不足を補うには政府の備蓄米を市場に出すか輸入するかの選択肢がある。政府は23日から備蓄米の放出に向け3回目の入札を始めた。

民間では中国や韓国からのコメ輸入も増えている。韓国米の輸入は今年、過去最大の22㌧に達する見込みとなっており、東日本大震災のあった2011年の10㌧を超えた。

また小売り大手のイオンは米国産8割と国産2割のブレンド米を今月から系列2000店舗で販売している。価格は5㌔換算で3000円台半ばになる。ほかにアマゾンなどの通販でも輸入米が扱われており、国産米の不足を受けて消費者は海外に目を向け始めている。

政府でコメの輸入枠拡大が検討に上がったのは、トランプ政権の関税政策によるものだ。ミニマムアクセスとして年間77万㌧を無税で輸入しており、このうち主食用米は最大10万㌧とされている。財務省は主食米用の輸入枠拡充や入札の前倒しによって国内の需給を調整しやすくなるとしている。

既に民間で輸入米を用いて価格を抑制する取り組みをしているところ、遅ればせながら政府も輸入枠拡大を柔軟に取り入れてはどうか。

政府はカロリーベースの食料自給率を30年度に45%にする目標を掲げて、コメの増産を図る「食料・農業・農村基本計画」を閣議決定したばかりだ。だが、現在のコメ不足に即応できるものではない。

国産米生産強化と併行で

また、かつては食糧管理法の下でコメの生産、流通、価格が管理され安定していた。その後、消費量の減少に伴って行われてきた減反も廃止されたものの、コメの生産量は上向かない。米不足はすなわち従事者の不足であり農地の不足だ。安い標準米を作っていた農家は高齢化とともに離農し、高いブランド米の生産農家が生き残る市場中心の構造になったことが、思わぬ品不足を招いたと言えまいか。

国産米生産の強化と併行して、コメ価格の高騰を落ち着かせる輸入枠を設定すべきだ。

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