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人口減少 結婚・出産の価値再認識を【社説】

わが国の人口減少が予想以上の速さで進んでいる。これまでの政府による少子化対策の成果がほとんど見られず、新しい対策の効果も見通せない。

結婚や出産の価値を再確認し、実効性のある対策につくり直す必要がある。

18県で減少率が1%超

総務省が発表した2024年10月1日現在の外国人を含む総人口は前年比55万人減の1億2380万人だった。14年連続の減少である。75歳以上は70万人増の2077万人だった。

24年の出生児数は前年比4万1000人減の71万7000人であるのに対し、死亡者数は1万2000人増の160万7000人だった。18年連続で出生児数が死亡者数を下回る「自然減」となり、減少幅は過去最大の89万人となった。

年齢別では15~64歳の生産年齢人口が22万4000人減って7372万8000人となり人口に占める割合は59・6%。15歳未満は34万3000人減って1383万人で、全体の11・2%と過去最低を更新した。少子高齢化も一段と進んでいる。

人口の自然減は全ての都道府県で起きている。東京都と埼玉県だけが人口が増加しているが、どちらも転入者が転出者を上回る「社会増」だった。18県で人口減少率が1%を超え、最も高いのが秋田の1・87%、次いで青森1・66%、岩手1・57%など東北地方で著しい。

政府は岸田文雄政権の「次元の異なる少子化対策」を引き継ぎ強化する方針だが、その柱は児童手当の拡充や子育て支援などだ。これらは主に既に結婚しこれから子供をもうけようという人々が対象だ。しかし、それ以前に結婚したくても相手を見つける機会に恵まれなかったり、経済的な余裕がなかったりする若者が沢山いる。ここにまず焦点を当てなければならない。

林芳正官房長官は「多くの人の子供を産み育てたいという希望が実現しておらず、少子化に歯止めがかかっていない」とし、若い世代の所得向上など総合的な施策の推進に取り組むと強調した。

若い世代の所得向上とりわけ地方における賃金のアップなどは早急に取り組むべき課題だ。ただ結婚し子供を産みたいとの希望を持つ若者がいる一方で、婚姻数が減っているという現状にもメスを入れる必要がある。23年の人口動態統計では婚姻件数が前年と比べ約3万組減少している。

地方創生の実現後押しを

若い世代に対して家族の価値を訴え結婚を奨励し、ゴールインを後押しする取り組みをすべきである。多少の経済的な困難があっても、それを補って余りあるものが結婚や出産、育児にあることを知らせなければならない。もちろん押し付けがましくなってはならないが、価値観の転換が必要だ。

東京の出生率が全国で最低なのは、仕事中心で個人主義、核家族主義の都市的な価値観や生活スタイルによるところが大きい。人口のブラックホールと化した東京への一極集中を打破するために、今度こそ地方創生を実現する必要がある。政府の強力な後押しと地方の奮起が求められる。

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