政府が閣議決定した「食料・農業・農村基本計画」は、昨今の世界の食料事情から食料の輸入に不安要素がある点を指摘するとともに、2023年度に38%だったカロリーベースの食料自給率を30年度に45%にする目標を掲げた。
農産物の輸出も増やすとしており、目標を実現させるために国内で増産を図る施策を期待したい。
輸出に積極的な取り組み
基本計画は23年に791万㌧だったコメの生産量を30年に818万㌧に、同じく109万㌧だった小麦を137万㌧に、26万㌧だった大豆を39万㌧にするなどの目標を設定した。また、24年実績で4・6万㌧だったコメ輸出を30年に35万㌧とするなど、農産品輸出に積極的に取り組む方向だ。
食料自給率の現状は減少傾向にあり、わが国のカロリーベースの食料自給率が40%台を割り込んでから既に四半世紀となる。昭和時代までは50%を維持していたが、平成になった1989年に50%を割り込んだ。2010年には39%になった。
その分、農産物の輸入が増えた。国内農業は競争力が弱く1990年代になると貿易自由化の波にのみ込まれた。当時、工業製品輸出で貿易黒字が膨れ上がったわが国は、牛肉、オレンジなど農畜産物の輸入自由化を米国から強く求められた。
貿易自由化は自給可能なコメにも及び、95年に食糧管理法が廃止されると、コメ農家は減反政策も相まって離農するようになった。99年に食料・農業・農村基本法が制定されたが、国内農業は今日に至るまで衰退し、食料自給率は挽回することなく下がり続けている。基本計画は次のように警鐘を鳴らした。
「農業者の減少・高齢化は著しく進展している。基幹的農業従事者(15歳以上の世帯員のうち、ふだん仕事として主に自営農業に従事している者)は、2000年の240万人から2024年には111万人と半減し、その年齢構成のピークは70歳以上の層となっている。農地は、我が国の人口1・2億人分の国内需要を賄うために必要な面積の3分の1程度しかない状況である」。国内農業の崩壊が進んでおり、将来に不安を感じざるを得ない。
また、世界の農産物の生産量はこれ以上増えないとみられており、気候変動、ロシアのウクライナ軍事侵攻など想定外の変化が、国際的に食料需給を左右してしまう。
大規模営農化を進めよ
わが国は世界最大の食料輸入国だったが、今や中国が世界一であり、新興国の輸入も増えている。また海運による食料輸入には、シーレーンの地政学的リスクや輸送コストなどマイナス面があることを基本計画は指摘している。
食料を輸入に頼るのは不安である。国内生産による食料の安定供給が願われることは論を俟(ま)たない。江藤拓農林水産相は基本計画を閣議決定した後の記者会見で「15㌶以上の生産基盤がないとコメ価格も一定以上は下がらない」と述べ、農地の集約化の必要性を指摘した。農業従事者の育成、大規模営農化を進めて増産を図るべきだ。