警視庁は今月、東京・歌舞伎町の「トー横」と呼ばれる一帯で14~19歳の男女計25人を一斉補導した。
以前と比べるとトー横での補導は減少傾向にあるが、この一帯では未成年者が犯罪に巻き込まれる事件が相次いでいる。進学や進級などで子供たちの生活環境が変わる時期でもあり、警視庁は犯罪被害防止の取り組みを強化すべきだ。
市販薬の過剰摂取も
トー横とは「新宿東宝ビルの横」の略。若者が集い始めたのは平成の終わりごろと言われている。ネオン看板を背景にダンスを踊る様子がSNSに多く投稿され、若者のコミュニケーションの場になった。
深夜徘徊(はいかい)や喫煙などで今回補導された25人のうち24人が女性で、中には兵庫県から家出してきた無職の少女もいた。トー横では薬の違法販売や未成年者に対する性犯罪などが多発しているため、警視庁は「トー横には悪意のある大人もいる」として興味本位で来ないように呼び掛けている。犯罪被害を減らすには、さらに啓発を進める必要がある。
トー横では、現実逃避などの理由で未成年者が市販薬の過剰摂取(オーバードーズ)をすることも多い。今回補導された中にも多量の睡眠導入剤を所持する女子高校生がいた。SNSの体験談などの影響を受けている面もあろう。
しかしオーバードーズは、意識障害や不整脈、肝障害などを引き起こし、命に関わることもある危険な行為だ。厚生労働省は一部の市販薬について購入数を制限するなど対策を進めているが、オーバードーズの恐ろしさを効果的に発信することも求められる。
東京都は昨年5月、若者をサポートするための相談施設をトー横に開設。若者を公的な支援につなげることを目的に社会福祉士らが相談に乗っている。ただ、トー横のような場所は、大阪・ミナミの道頓堀にある「グリ下」や名古屋市中区の「ドン横」などほかにもある。
トー横などに集まるのは、両親の離婚や虐待で苦しんできた若者が多い。国は、虐待に悩んで家出する若者が安全に宿泊できる「こども若者シェルター」を整備する自治体に補助金を交付する事業に取り組んでいる。このシェルターは親権者の同意がなくても18歳未満の子供が利用できる。
自治体向けのガイドラインでは、シェルターは居場所の提供や相談支援のほか、就労や就学のサポートなどを実施するものとし、退所後の支援に関しては定期的な物資送付や訪問面談、SNSでの連絡や食事会を通じた元利用者らのコミュニティー形成などを例示している。国や自治体は民間団体とも協力し、さらなる支援の充実に努めてほしい。
伝統的な家庭観重視を
子供を保護するのは本来は家庭の役割だが、その力は低下する傾向にある。選択的夫婦別姓や同性婚などの制度が導入されればますます弱まるだろう。子供が健全に成長して自立できるようにするには、伝統的な家庭観を重視して家族の絆を強める政策が求められる。