トップオピニオン社説ETC障害 トラブルへの対応力強化を【社説】

ETC障害 トラブルへの対応力強化を【社説】

システム障害により、ETCが利用できなくなった中央自動車道三鷹本線料金所=6日午後、東京都三鷹市

中日本高速道路(NEXCO中日本)が管轄するエリアで自動料金収受システム(ETC)の障害が発生し、東名高速道路や中央自動車道などの一部料金所でETCの利用ができなくなったトラブルを巡っては、応急復旧作業の完了で利用を再開したものの、障害の詳しい原因は分かっていない。

高速道路でトラブルが発生すれば、物流が停滞し、私たちの生活に影響が及ぶ恐れもある。同社は原因究明を急ぐとともにシステム障害への対応力を強化すべきだ。

応急復旧まで38時間

今回のトラブルでは8都県17路線の料金所計106カ所でETCが利用できなくなった。各地で渋滞が発生し、同社はETC専用レーンを開放したが、応急復旧まで38時間かかった。2005年の道路公団民営化後、同社のETCの大規模なトラブルは初めてのことだ。

システム障害の詳しい原因はまだ明らかになっていない。当初は、改修したばかりの「地域管理システム」が原因とみられていた。だが、改修前の状態に戻した後も新たな障害が発生。調査の結果、その上位に当たる「広域管理システム」で課金に必要なデータが破損していたことが判明した。

01年に本格導入されたETCは、今年1月時点の利用率が全体の95・3%に達している。国土交通省や各高速道路会社は数年中に全ての料金所をETC専用にする方針だ。しかし、こうした重要インフラで生じたトラブルが長時間解決されなければ大きな混乱は避けられない。

それにもかかわらず、NEXCO中日本では大規模障害を想定したマニュアルを作成していなかった。システムの複雑化のほか、サイバー攻撃などによるトラブルの可能性は予測できたはずだ。危機管理が不十分だと言わざるを得ない。

同社を含む高速道路3社は、障害の原因や対策を検討する有識者委員会を発足させる。中野洋昌国交相は今年6月中をめどに再発防止策と危機対応マニュアルを策定し、国交省に報告するよう求めたという。日本の大動脈である高速道路を管理する責任の重さを自覚し、今回のようなトラブルへの対応力を強化しなければならない。

開放したETC専用レーンの利用者に、同社が料金を後日精算するよう呼び掛けたことも不評を買っている。同社の約款では高速道路の管理などによる瑕疵(かし)で利用者に損害が出た場合は賠償するとしている一方、ETCで不具合が生じた場合に料金を払う必要はないとの規定はない。だが、障害が発生したのは利用者のせいではない。こうしたケースについては、利用者の理解も得られるようなルールを定めるべきではないか。

高速会社は課題克服を

ETCは料金体系の見直しのたびにシステムの改修が継ぎはぎ的に繰り返され、障害発生のリスクを高めている。1月に開かれた国交省の審議会では、高速会社幹部が「今後、新たな改修を行うのは限界に来ている」と述べた。

各高速会社はトラブルに備え、今回浮き彫りとなった課題の克服に努める必要がある。

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