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企業風土に対する断罪だった。元タレント中居正広氏と女性とのトラブルを巡るフジテレビの問題で、同社と親会社が設置した第三者委員会がまとめた報告書。トラブルは「性暴力」だったと認定した上、「全社的にハラスメントが蔓延(まんえん)していた」とも指弾した。
中居氏の番組出演を継続
公共財である電波を使い、報道機関としての役割を担うテレビ局には高い人権意識と倫理観が求められる。その一翼を担う同社が長年、性暴力を誘発させる企業風土を内包していたとは、驚きを禁じ得ない。経営陣は報告書の内容を真摯(しんし)に受け止め猛省し、ハラスメントに甘い企業体質を総力を挙げて改善すべきだ。CMを差し止めている企業は、その進捗(しんちょく)状況を見て再開を決めることになろう。
注目されたのはトラブルの重大性と、それがプライベートな関係性の中で発生したのか、それとも業務と関係があったのかという点だった。報告書は、同社のアナウンサーだった女性が社員当時、中居氏から「性暴力」被害を受けたと認定した。また、性暴力が起きた中居氏のマンションでの食事会には同社社員は関わっていなかったが、「業務の延長線上」で起きたとして社に責任があることも明らかにした。その上で、同社には重大な人権侵害を発生させる体質があったと非難している。
信じ難いのは、性暴力が発生してからの同社の対応だ。一つは、性暴力を「プライベートな男女間のトラブル」と即断し、中居氏の番組出演を継続したことだ。加えて、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症し入院した女性に、中居氏の依頼を受けた同社幹部が見舞金名目で100万円を渡そうとした。中居氏に同社と関係のあった弁護士を紹介することもしている。
被害者である女性側に立つべき会社が加害者側に立って動いていたことになる。これでは、女性が大物タレントを守ろうとする会社に見捨てられた、と絶望感を抱いたのも無理はない。
現金を届けようとしたことは口封じである。報告書はこの対応を「二次加害行為に当たり得る」と強く非難した。同社幹部の人権についての認識の欠如、社の利益優先体質にはあきれてしまう。
報告書は、社員によるセクハラやパワハラが複数あったとも指摘した。特にバラエティー制作局では、セクハラを伴う飲み会が行われていたと言及。そして、テレビ局には若く容姿端麗なアナウンサーが多いが、これらの社員は取引先を接待する際に利用されていたという。
健全化に早急に取り組め
中居氏の性暴力が業務の延長線上で起きたと認定された背景にはこうした実態があるが、これは同社だけの問題ではなく、テレビ業界や芸能界に共通する体質ではないのか。テレビ局の幹部社員だけでなく、大物タレントも自己の優位な立場を利用し、女性アナウンサーやタレントが飲み会参加を拒否できない状況にしてしまっていることは以前から言われていたことだ。深く結び付いている両業界は社会的な影響力の大きさを自覚し、性倫理を向上させるなど健全化に早急に取り組むべきだ。