トップオピニオン社説ミャンマー地震 被災者の救援と復旧に全力を【社説】

ミャンマー地震 被災者の救援と復旧に全力を【社説】

3月30日、ミャンマー中部マンダレーで、地震で崩壊した建物の中に取り残された人を搬出する救助隊員ら(EPA時事)

ミャンマー中部を震源とするマグニチュード(M)7・7の大規模地震は、ミャンマーおよび遠く離れたタイにまで大きな被害をもたらしている。被災者は850万人とミャンマーの民主派組織が発表した。国軍は民主派や少数民族武装勢力への空爆を継続している場合ではない。一日も早い救援と復旧に全力を挙げるべきだ。

民主派などへの攻撃続く

首都ネピドー、第2の都市マンダレー、ザガインなど被災地は広く、震源から1000㌔以上も離れたタイの首都バンコクでも建設中の高層ビルが倒壊するほどの被害が出た。ミャンマーでは2800人以上の死者が確認されており、今後3000人を超えるとの見通しだ。タイでは十数人の死者を出しており、行方不明者は70人以上とみられている。

これほどの被害が起きたが、地震発生の予想や警戒があったわけではない。200年近く地震がなかった地域で発生しており、意表を突く自然災害は驚きを持って受け止められた。

だが、震源に近いザガイン地域からネピドー、旧首都ヤンゴンまで南北に約1500㌔も伸びるザガイン活断層が存在し、長期間にわたってひずみをためていた。この断層が地中深くで横ずれを起こし、約200㌔にわたり岩盤が動いたとみられている。このため震動は縦揺れではなく横揺れで、遠いバンコクの高層ビルまで揺さぶった。

避難民は日中40度を超す暑さの厳しい環境での生活を余儀なくされている。被災者の生存率が下がる地震発生から72時間は3月末で経過しており、救助活動は続くものの今後は避難民援助に本格的に取り組まなければならない。復旧には相当の時間がかかることから、避難生活は長期に及ぶとみられるが、生活資材が十分ではない。救援活動も人員や機材が不足しており、遅れ気味だ。

また、大規模な地震は政情不安の中で発生しており、救援や復興に支障を来すことが懸念される。アウンサンスーチー氏を指導者とした民主派政権が2021年の国軍クーデターで倒され、中国やロシアが支援する軍政が復活した。地震発生から間もなく中露は救援隊を現地入りさせている。

一方、民主派は「国民統一政府(NUG)」を樹立し、一部で少数民族と連携して各地で武装闘争を行っており、地震発生後は国軍とは別に被災地での救援活動を行っている。国軍はNUGおよび少数民族への攻撃を地震後も続けており、被災地の災禍を増し加えている。

ミャンマーへの救援活動は、中露のほか、米国や国連、わが国なども実施するが、救援を行う国軍が、NUGの活動地域や少数民族の支配地域にどのような対応を取るか不安視されている。国際社会から届く救援物資の配分を分け隔てなく行えるように、国連や赤十字など国際機関が機能することを期待したい。当然、救助期間における停戦を実現させるべきだ。

平素から訓練や対策を

わが国では南海トラフ地震の被害想定が新たに発表されたところだ。平素から震災に備え、訓練や対策を心掛けたい。

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