トップオピニオン社説日米防衛相会談 指揮統制連携強め対中抑止を【社説】

日米防衛相会談 指揮統制連携強め対中抑止を【社説】

会談を前に握手する中谷元防衛相(右)とヘグセス米国防長官=3月30日午前、東京・防衛省

中谷元防衛相がヘグセス米国防長官と防衛省で会談し、自衛隊と米軍の指揮統制連携の向上などを通じて日米同盟の抑止力と対処力を一層強化していくことを確認した。日米両国は地域の安定に向け、覇権主義的な動きを強める中国を牽制(けんせい)する必要がある。

在日米軍強化は予定通り

日米の指揮統制連携を強化するため、バイデン前米政権は昨年7月、米ハワイのインド太平洋軍司令部傘下の在日米軍を統合軍司令部に格上げする方針を表明。これについて、ヘグセス氏は「第1段階を開始した」と明らかにした。格上げされれば、時差のあるインド太平洋軍司令部と調整するよりも迅速に意思決定を行えるため、自衛隊側の期待値は高い。

米メディアがトランプ政権の経費節減の一環で在日米軍の強化中止を検討していると報じる中、ヘグセス氏が予定通り進める方針を公表したことは心強い。ヘグセス氏は「在日米軍司令部を戦う司令部に再編する。人員を増やし、司令官に新たな任務を遂行するために必要な権限を付与する」と語った。

中谷氏は「同盟の抑止力・対処力(強化)の取り組みについて、切迫感を持って進めていく決意を確認した」と述べた。米軍との連携を強めるため、日本側では陸海空3自衛隊を一元指揮する「統合作戦司令部」が発足。従来の陸海空に宇宙・サイバーも加えた広範囲をシームレスに指揮し、各分野を組み合わせる「領域横断作戦」の能力向上を図る。将来は統合軍司令部のカウンターパートとなる。

一方、ヘグセス氏は「米国と日本は、中国共産党による攻撃的で威圧的な行動に断固として立ち向かう」と強調した。さらに「台湾海峡を含む」と明言した上で「米国はインド太平洋地域で、強力で即応性があり信頼に足る抑止力を維持することに責務を負う」と表明。台湾有事の阻止を念頭に「強固な同盟を構築する」とも言い切った。

米国は、中国の習近平政権が人民解放軍の創設100年に当たる2027年までに台湾武力侵攻の準備を整えるとして警戒を強めている。「台湾有事は日本有事」であり、日米は指揮統制連携の強化で対中抑止力の向上を急ぐべきだ。会談では、南西諸島での共同訓練拡充など日米のプレゼンス強化も確認した。

ヘグセス氏は石破茂首相とも面会。首相は2月のトランプ大統領との首脳会談に言及しつつ「国際情勢が一層厳しい中で『自由で開かれたインド太平洋』を実現するため、日米が同盟関係を強固なものにすることは極めて重要だ」と述べた。

世界平和のため尽力を

防衛相会談に先立ち、首相と中谷、ヘグセス両氏は太平洋戦争末期に激戦地となった硫黄島(東京都小笠原村)を訪れ、戦没者の日米合同慰霊式に出席した。首相は慰霊式で「かつて戦火を交えた日米は、和解を果たして関係を深め、信頼し合える同盟国となった」と強調。その上で「平和の尊さを心に刻み、日米同盟を新たな高みに引き上げていく」と決意を語った。

過去の敵対関係を乗り越えた日米両国は、世界平和のために尽力しなければならない。

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