同性カップルを結婚相当に扱うパートナーシップ制度導入を定めた、わが国初の条例が東京都渋谷区で成立してから31日でちょうど10年となる。
LGBT(性的少数者)の権利拡大運動は節目を迎えているが、この間、国会、地方行政、司法、教育のあらゆる分野に「性の多様性」の考え方が浸透するとともに、男女の性規範が揺らぎ、伝統的な家族が崩壊寸前の事態に陥っている。国力の礎である性規範が崩れるのは、国を内側から弱体化させるもので、憂慮すべき状況だ。
500近い自治体で導入
一方、目を海外に転ずれば、2015年に連邦最高裁が同性婚を合法化させた米国では、性的少数者の権利拡大の行き過ぎによる混乱への反省から、第2次トランプ政権のスタートと共に性の多様性政策を転換している。わが国も、これまでのリベラルなLGBT政策から伝統的な価値観を軸にした政策に舵(かじ)を切り、性規範の崩落に歯止めをかけるべきだ。
渋谷区のパートナーシップ制度導入以降、同制度は約490の自治体に広がり、国家レベルでは2年前、LGBT理解増進法が施行された。同性婚禁止の合憲性を争う訴訟では、二審の判決5件全てが「違憲」判決だった。司法は同性婚の法制化に突き進んでいるように見える。
26年度から高校1、2年生が使用する教科書の検定結果が公表されたが、公民、家庭、国語などでLGBTに関する記述がさらに増えている。ある家庭基礎の教科書はゲイやレズビアンについて説明し「社会では性の多様性を認識し、制度の在り方を考えることが求められる」と記載した。これでは性規範を薄れさせるとともに、同性婚の制度化を奨励するのに等しい。教育現場ではすでに、同性愛カップルを講師に招いて過激な性教育を行う小学校も出ている。
これらの動きを見ると、リベラル・メディアの後押しを受けながら米国の後を追うように、伝統を否定する「ポリティカル・コレクトネス」を実践し続けた10年だったと言えよう。
だが、日本よりも早くLGBT運動が巻き起こった米国では、トランプ大統領が上下両院合同会議における施政方針演説で「世の中に性別は二つしかない。男性と女性だ」と強調。性自認によって性別は判断されるべきとするトランスジェンダリズムの見直しを明言した。
トランプ政権に学べ
この発言の背景には、女性競技に「トランス女性」の参加を認めるなど、LGBTの権利拡大運動が行き過ぎたことへの国民の反発がある。その中心にいるのは、米国の発展を支えてきた保守的なキリスト教徒たちである。時にリベラルに大きくぶれる米国だが、確固とした信念を持つ宗教陣営が伝統的価値観を軸にした社会に戻す力を持つところに米国の強さがある。
トランプ政権は本来、保守政治のあるべき一つの姿を示しており、日本の政治家はそれを学ぶ必要がある。日本の発展を支えてきたのは神仏と家族を大切にする伝統文化だ。LGBT運動が本格化してから10年の節目を迎えた今、性規範の再生に向け、保守陣営の奮起が待たれる。