トップオピニオン社説先島避難計画 実効性向上へ体制整備急げ【社説】

先島避難計画 実効性向上へ体制整備急げ【社説】

政府は台湾有事などを念頭に置いた沖縄県・先島諸島の住民ら約12万人の避難に関する計画を公表した。

中国の習近平政権は、人民解放軍の創設100年に当たる2027年までに台湾武力侵攻の準備を整えるとされている。計画実施に向けた体制整備を急ぐ必要がある。

住民を8県32市町に輸送

22年末に改定した国家安全保障戦略には南西地域を含む住民避難計画の策定が明記された。今回の計画は武力攻撃事態法に基づく「武力攻撃予測事態」を想定し、最初の1カ月間の対応をまとめたもので、避難対象となるのは宮古島市、多良間村、石垣市、竹富町、与那国町の5自治体。住民約11万人と観光客約1万人を自衛隊や海上保安庁の船舶、民間のフェリーや航空機を使って福岡空港や鹿児島空港、鹿児島港へ輸送する。

住民は空港や港からバスなどで九州と山口の8県計32市町にある旅館やホテルに移動。食料や生活必需品を提供され、健康管理や通信設備の体制も整えられる。今後も高齢者ら要配慮者の避難方法などについて検討を進め、26年度に基本要領を策定する。実動訓練に向け、関係自治体などと既に実施している図上訓練も重ねる方針だ。

政府は脱出拠点の一つとなる新石垣空港(石垣市)について、有事に備えて平時から訓練などで利用する「特定利用空港・港湾」の候補として検討を進めている。しかし管理者の沖縄県が慎重な姿勢を崩さないため、選定には至っていない。背景には、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡る玉城デニー知事の国との対決姿勢があろう。玉城氏は今回の計画に対しても非協力的だ。

だが、台湾有事は決して絵空事ではない。台湾危機の可能性が指摘される27年は、習共産党総書記(国家主席)の3期目最後の年。習氏は建国の父、毛沢東と並ぶ終身指導者を目指しているとされ、共産党の悲願である台湾統一に向けた成果を挙げれば4期目への強力な後押しとなる。ロシアによるウクライナ侵略の行方も注視しつつ、台湾侵攻のタイミングを計っているとみていい。

台湾有事の可能性が高まった場合、いつ武力攻撃予測事態を認定するかも重要だ。認定されると自衛隊への防衛出動待機命令が可能となるなど、臨戦態勢に近づくことを意味する。このため、認定後でなければ国民保護措置が発動されないことを問題視する見方もある。

緊急事態条項の創設を

避難対象となる自治体の中でも与那国町は台湾から約110㌔と近い。人民解放軍は22年8月、ペロシ米下院議長(当時)の訪台に強く反発し、台湾を包囲した大規模演習を実施。弾道ミサイルが日本の排他的経済水域(EEZ)内に着弾した。計画の実効性向上に向け、必要であれば法整備も含めた取り組みを進めてほしい。

国民保護法に基づく避難措置を受け、知事が避難を指示した場合、従わない人への罰則がないことも問題だ。

避難体制を強化するには、憲法に緊急事態条項を創設することも欠かせない。

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