から隊旗を受け取り、撮影に応じる南雲憲一郎司令官=24日午後、防衛省.jpg)
陸海空に宇宙・サイバーを加えた広範囲をカバーし、3自衛隊を一元的に指揮する統合作戦司令部が発足した。強力な指揮・統制権限による組織の垣根を越えた運用で有事への即応力を高めるとともに、米軍との連携を円滑に進めることによってインド太平洋地域の平和を守る力を強化してほしい。
3自衛隊を一元的に指揮
「平素から有事に至るまでシームレスに事態に的確に対応する」と初代統合作戦司令官の南雲憲一郎空将は述べた。有事は平時の中から起きるものであり、有事の芽を摘むには切れ目なくあらゆる手段を講じるべきだろう。実際に有事となれば、持てる力で有効に手を尽くさなくてはならない。今後は平素の訓練から有事まで一貫して対処することになる。
これまでは統合幕僚長が陸海空の3自衛隊を束ね、有事の際は指揮官として自衛隊を率いると同時に首相や防衛相の補佐を行うことから、相当な激務が予想されてきた。このため、平時から部隊を指揮する常設の司令部を設置する必要があった。
また、統合作戦司令部の発足に伴い、米軍も在日米軍司令部を「統合軍司令部」に再編成する方向だ。わが国およびインド太平洋地域における日米の作戦調整を行い、即応力強化に努めることになる。
3自衛隊を別々ではなく一元的に指揮するのは、一瞬を争うデジタル情報技術が発達した今日のような時代の流れでもある。ロシアはウクライナ侵攻以前から、サイバー戦、心理戦など複合的な組み合わせによるハイブリッド戦を仕掛けていた。脅威をもたらす各種の事態に領域横断的な部隊運用を迅速に行うことが必要だ。
ミサイル攻撃への対応としてわが国は、海上自衛隊のイージス艦、航空自衛隊の警戒管制レーダー、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)などを組み合わせた統合防空ミサイル防衛を定めている。また、統合作戦司令部は敵基地攻撃能力を持つ長射程ミサイルを運用する。米国製巡航ミサイル「トマホーク」が来年度末に配備されるが、米軍の力を借りながら司令部の下で十分に機能させることが可能であることを示すべきだ。
世界では、ウクライナ、パレスチナ自治区ガザなど軍事的衝突が起こる不測の事態が後を絶たなくなっている。日本の周辺でも軍事的脅威は高まっており、核開発を行う北朝鮮は頻繁に弾道ミサイルを日本海に向けて発射。沖縄県・尖閣諸島の周辺海域では中国海警局の公船が威圧的に常駐し、空では中露の軍用機が領空侵犯した。
さらに台湾の統一をもくろむ中国は台湾海峡での軍事演習、軍用機による威嚇を強めており、数年のうちに軍事侵攻に踏み切る可能性を排除できない。安全保障環境の不安定化を回避するため、日米が一体となって対中抑止力を強化することは不可欠だ。
地域の平和に貢献を
統合作戦司令部の発足は自衛隊と米軍の連携をさらに強くするものであり、実戦力を高め、わが国および周辺アジア地域の平和と安定に貢献することを期待したい。