海外オンラインカジノの利用経験者が約337万人、賭け金が年間約1・2兆円に上ることが警察庁の推計で分かった。オンラインカジノを巡っては依存症などの問題が指摘されており、極めて深刻な事態だ。政府はアクセス抑止の方法を模索するとしているが、対策を急ぐ必要がある。
4割が違法性認識せず
オンラインカジノとは、スマートフォンやパソコンでインターネット上のカジノに接続して行う賭博。24時間365日、サイト上のスロットマシンやルーレット、スポーツの勝敗などに金銭を賭けることができる。
接続先の海外で賭博が合法であっても、日本国内から接続しての賭博行為は違法だ。ところが今回の警察庁の調査では、経験者の約4割が違法性を認識していなかった。罰則は単純賭博罪で50万円以下の罰金または科料、常習賭博罪では3年以下の懲役となる。オンラインカジノの蔓延(まんえん)を防ぐには、まず警察が違法であることを国民に明示しなければならない。
警察庁が昨年8月から今年1月にかけて調査した40のサイトは、いずれも海外で取得されたライセンスに基づいて運営されていたため、日本国内の法規制を受けることなくサービスを提供できるという。その意味でも、警察の啓発活動の重要性は高いと言えよう。
オンラインカジノの利用者が多いのは、スマホでできる手軽さが要因となっている。このほか本来は金融機関によるチェックで難しい賭け金の海外送金について、海外のカジノ事業者と連携し決済を代行する国内業者の存在も利用拡大に拍車を掛けている。業者は利用者の入出金の一部を手数料として得ており、警察は摘発を強化すべきだ。
さらに、芸能人やスポーツ選手らがカジノサイトを宣伝していた事例もある。違法行為を助長するような宣伝は大きな問題があると言わざるを得ない。
深刻なのは、経験者の約6割にギャンブル依存症の自覚があることだ。特に10~30代は約7割に上った。オンラインカジノがきっかけで借金をしたことがある経験者の割合は46・2%に達している。賭け金を手にするため、闇バイトなどの犯罪に走るケースもある。
総務省はサイトへの接続を遮断する「ブロッキング」などに関し、近く検討の場を設ける方針だ。ブロッキングは「通信の秘密の侵害」につながるとの見方もあるが、児童ポルノサイトに対しては児童の人権侵害を防ぐための「緊急避難」との位置付けで実施されている。オンラインカジノについても、ブロッキングによって通信の秘密が一定の制約を受けることはやむを得ないだろう。
「ブロッキング」導入を
オンラインカジノは違法であるだけでなく、依存症になれば家族関係や社会生活に悪影響を及ぼす恐れがある。米大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手の元通訳が、大谷選手の口座から巨額の不正送金を行い、違法賭博につぎ込んでいた事件は記憶に新しいが、元通訳は深刻な依存症だったとされている。政府はブロッキングの導入に向けた議論を急ぐ必要がある。