東北新幹線下り上野-大宮間を走行中の「はやぶさ・こまち21号」で車両連結部が分離したトラブルは、乗客計約640人にけがはなかったものの、それで済ますことのできない重大な問題だ。
JRはもちろん、乗客の命を預かる公共交通機関は安全意識の一層の向上が求められる。
重大インシデントに認定
分離したのは、新青森行きはやぶさ(10両)と秋田行きのこまち(7両)。東京駅を出発し、上野駅を出て時速約60㌔で走行中に分離した。このトラブルの影響で、東北、上越、北陸各新幹線は約3時間にわたって全線で運転を見合わせ、計111本が運休、166本が最大約5時間遅れ、約15万人に影響が出る事態となった。
JR東日本は詳しい原因が判明するまで連結運転を全て取りやめるとしていたが、きのうから一部列車を除いて再開し、きょうから通常ダイヤで運行するという。分離を防ぐため、金具で専用レバーを固定する応急処置を施した。
しかし今回のトラブルについては、電気系統に異常が生じ、運転席にあるレバーが動いて連結器が外れた可能性が指摘されている程度で、原因は特定できていないままだ。乗客からは原因究明を求める声も上がっている。JR東は引き続き究明を急ぐとともに再発防止策を打ち出し、乗客の不安払拭と信頼回復に努める必要がある。
東北新幹線では昨年9月にも、はやぶさ・こまち6号で走行中に連結が外れるトラブルが発生している。この時は上下線で約5時間運転を見合わせ、計72本が運休、約4万5000人に影響した。
このトラブルでは、連結器を強制的に分離するスイッチの裏側から金属片が見つかり、金属片の影響によってスイッチが誤作動した可能性が高いことが分かっている。わずか半年の間に、新幹線の安全を脅かす同様のトラブルが続けて生じたことは到底看過できない。
今回のトラブルに関して、国土交通省は大事故につながりかねない重大インシデントに認定した。JR東は重く受け止め、全社を挙げて安全意識を向上させなければならない。
新幹線での認定は2017年12月、台車に亀裂が見つかったJR西日本の「のぞみ34号」以来だ。この時は亀裂が破断寸前の状態で、乗務員らが異臭や異音に気付いたものの、乗客約1000人を乗せて名古屋駅まで約3時間にわたり運行が続けられた。運輸安全委員会が19年3月に公表した報告書によると、JR西側で重大事にはならないと無意識に思い込む心理的作用が影響し、早期把握できなかった可能性がある。
安全最優先の意識不可欠
新幹線はそのスピードと共に安全性が大きなセールスポイントだ。だが今回のようなトラブルが続けば、大事故を招きかねない。「新幹線だから安全」なのではなく、JR社員の安全最優先の意識こそが不可欠であることを自覚してほしい。
他の鉄道会社や公共交通機関も今回のトラブルを「他山の石」として一層の安全運行を心掛けるべきだ。