トップオピニオン社説東日本大震災14年 若い力による創造的復興を【社説】

東日本大震災14年 若い力による創造的復興を【社説】

死者1万5900人、行方不明者2520人を出した東日本大震災から14年が経過した。復興は着実に進んだが、被災地では人口流出などの問題を抱えている。

移住受け入れに力入れる

政府の復興基本方針で2025年度は21年度に始まった第2期復興・創生期間の最後の年度に当たり、地震・津波の被災地においては「復興の総仕上げの段階」と位置付けられる。これまでの復興事業で、道路、鉄道、学校、住宅、防潮堤などハード面での復興はほぼ完了した。

その一方で宮城県の沿岸部などは急激な人口減少が起きている。住む人が減り続けては復興の未来像は描けない。若い人たちが地元に留まり、外からの移住者を呼び込むためには、生業の再生が鍵になってくる。

被災地域の基幹産業は、農業や水産業などの一次産業だ。宮城県石巻市の金華山沖は世界三大漁場の一つであり、その豊かな漁場を前にした三陸沿岸の水産業、水産加工業は大きな潜在力を持つ。ただ働き手の高齢化に加え、気候変動の影響もあり、厳しい状況に直面しているのが現状だ。

国や自治体のさらに踏み込んだ支援が求められるが、何よりそこで新しい産業やビジネスモデルを創出する必要がある。「新しい葡萄酒は新しい革袋に」と言われる。その担い手となるのは若い人たちであり、若い人たちが核となって移住者を呼び込む流れをつくっていくべきだ。こうした中、被災地を巡る外国人のツアーなども好評を博しているという。

東京電力福島第1原発事故で被災した福島県では、除染などが優先的に進められた「特定復興再生拠点区域」(復興拠点)での避難指示が解除され、インフラも整備されて少しずつ帰還者や移住者が増えてきている。しかし帰還者はまだ1割に満たず、今も約2万5000人が避難生活を続けており、帰還するかどうか迷う人も少なくない。時間が経(た)てば経つほど、帰還したいと思う人は減るだろう。帰還受け入れのための態勢整備が急がれる。

一方、双葉町など他県からの子育て世代が移住するというケースも増えている。同町では移住者のために「お試し住宅」も用意するなど移住受け入れに力を入れ、新しい地域コミュニティーも生まれている。政府や自治体は、このような動きをより積極的に支援すべきだ。

事前防災の態勢整えよ

福島産の農産物は海外でも好評だが、営農再開がまだ5割ほどに留まっている。農業再生にも期待したい。

東日本大震災以降も、16年には熊本地震、昨年は能登半島地震などの大地震に見舞われた。温暖化による豪雨や洪水被害も増えている。日本列島において自然災害はいつどこでも発生する可能性があるとの観点から、事前防災の態勢を整える必要がある。政府は要請を待たずにプッシュ型支援を行う備蓄拠点を全国8ブロックに設ける。また、ボランティア団体の事前登録制度の創設などを柱とした災害対策基本法の改正案を今国会に提出している。速やかな成立を望みたい。

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