岩手県大船渡市の山林火災は発生から1週間近くたつが、現在も延焼が続いている。国や自治体は一刻も早い鎮火に全力を挙げるとともに、地球温暖化による山林火災の多発が予測される中、予防策の強化に努める必要がある。
リアス式海岸で消火困難
火災は2月26日に発生し、大船渡市で男性1人の焼死体が見つかった。家屋など80棟以上が焼損したとみられているが、詳しい被害の状況は分かっていない。焼失面積は約2100ヘクタールに上っており、自衛隊や自治体がヘリコプターなどで懸命の消火活動に当たっている。しかし、現在のところ鎮火の見通しは立っていない。
市が出した17地区(1896世帯4596人)への避難指示は継続され、依然として約1200人が避難所に身を寄せている。国や自治体は住民の避難生活支援に力を尽くしてほしい。
今回の火災が大きく広がった要因として極度の乾燥と強風が挙げられる。大船渡の2月の降水量はわずか2・5ミリで観測史上最少。平均の16分の1以下という少なさだった。また通常は北極上空にある大気の渦の一部が日本列島付近に居座り、大陸からの季節風が長く吹き続けたことも指摘されている。
さらに、この地域の地理的特徴が消火活動を困難なものにしている。山が迫るリアス式海岸が続き、消防車が近寄りづらい場所が多いという。
大規模な山火事は海外でも発生している。米カリフォルニア州ロサンゼルス近郊で1月7日に発生した山火事では、少なくとも29人が死亡し、イートン地区とパシフィックパリセーズ地区では1万6200棟以上が損壊するなど大きな被害が出た。この火事も強風で火の手が広範囲に広がった。一時は約18万人に避難命令が出され、鎮火までに1カ月近くを要している。
世界的に山火事が多発する背景には温暖化がある。温暖化が進むと地面や空気が乾燥し、火災のリスクが高くなるからだ。ロスの山火事は、温暖化の影響で発生確率が約35%高まっていたとの分析も出ている。
日本では林野火災が、乾燥する2~4月を中心に年に約1300件発生する。出火原因は、2023年にはたき火が32%、野焼きなどの火入れ19%、放火7・5%、たばこ3・8%と人的要素が多くなっている。行楽などで山に行った場合、この時期は想像以上に火の回りが早いことを自覚し、火の扱いに注意することが私たち一人一人に求められよう。国や自治体による啓発強化も必要だ。
混乱を助長しないように
一方、今回の火災を巡ってはSNS上で偽情報が飛び交っていることにも警戒しなければならない。「空からレーザー兵器で焼き払っている」「スマートシティー化のために狙ってやっている」などというもので、大規模災害の際には人々の不安が強まるために根拠のない情報が拡散しやすい。ロスの山火事の際にも、生成AI(人工知能)で作られたとみられる偽画像などが広がった。
こうした情報に接しても安易に拡散させず、混乱を助長しないようにしたい。