トップオピニオン社説出生数過去最少 少子化対策、大胆に練り直せ【社説】

出生数過去最少 少子化対策、大胆に練り直せ【社説】

少子化、人口減少の流れを変える大胆で総合的な施策を練り直す必要がある。厚生労働省は2024年の出生数(速報値)が過去最少の72万988人と発表した。9年連続の最少更新である。

想定超えるスピード

前年の速報値から3万7643人の減少で、全都道府県で減少した。速報値は日本で生まれた外国人などを含んでおり、6月に発表される日本人のみの出生数は、さらに減り70万人を割る可能性がある。

国立社会保障・人口問題研究所が23年に公表した将来推計人口では、年間出生数が72万人台になるのは39年とされていた。その予測より15年も早まった。想定を超えるスピードで少子化が進んでいるのだ。出生数は16年に100万人の大台を割ると、19年に90万人、22年には80万人を下回った。

発表によると死亡数は前年比1・8%増の161万8684人で過去最多となり、死亡数から出生数を引いた人口の自然減は89万7696人で、減少幅が前年より約6・5万人拡大して過去最大となった。「静かなる有事」の認識を改めて持って取り組む必要がある。

政府は少子化対策として「こども未来戦略」を策定し、年3兆6000億円規模の予算を投入する。「改正子ども・子育て支援法」が昨年成立し、児童手当の所得制限を撤廃。支給期間を高校生まで拡大し、第3子以降への加算も倍増した。

しかし、子育て世代への大盤振る舞いと言ってもいい児童手当の増額などが、それだけの実効性があるのか疑問視する声が強い。

子育て世帯には当然歓迎されるだろう。しかし非婚化、晩婚化が少子化の大きな原因となっている現状を考えれば、まず婚姻数を増やすことが重要だ。24年の婚姻数は前年の48万9281組から49万9999組となり2・2%増とはいえ、新型コロナウイルス禍前の水準には戻っていない。

婚姻数の減少は、経済的な理由、時代の流れの中で人生観が変化したことなどが要因となっている。この問題に切り込み、若い世代の結婚が増加するための総合的な施策が必要だ。

少子化の大きな原因となっているのは、出産適齢期の女性が、東京圏など大都市圏に転入し、地方からいなくなることだ。人口のブラックホールとなった東京への一極集中を打破しなければならない。

少子化は、多大な予算を投入し児童手当を増額するなどしても、そこそこの効果しか期待できないのではないか。都市と地方の関係、構造を変えるような、もっと大胆な施策なくして、真に実効性のある少子化対策とはならないだろう。

人の流れ変える熱量を

石破茂首相は今国会の施政方針演説で、東京一極集中打破と地方創生を目指す「令和の列島改造」を政権の目標に掲げた。しかし、マスメディアをはじめとして、石破首相の政治の師である田中角栄元首相が「日本列島改造」を打ち出した時のような盛り上がりが見られない。お金と人の流れを変えるには、そのための熱量が必要だ。

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