フィリピンを訪問した中谷元・防衛相がテオドロ国防相と会談し、自衛隊とフィリピン軍の連携強化に向け、部隊運用担当者間の戦略的対話の立ち上げで合意した。
日本は東シナ海、フィリピンは南シナ海で中国の脅威にさらされている。地域の平和と安全を守るため、日比の「準同盟」関係とともに日米比の枠組みの強化を急がなければならない。
同志国とのつながり重視
会談では、防衛装備・技術協力の進展を目指し、防衛当局者間の協議枠組みを新設することで一致。中国を念頭に、米国やオーストラリアといった同盟国・同志国との連携を深める方針も確認した。中谷氏は会談後の共同記者発表で「インド太平洋地域の平和と安定を維持するためには、防衛面の協力をさらなる高みに引き上げていく必要がある」と述べた。
2023年11月、当時の岸田文雄首相がフィリピンのマルコス大統領と会談し、自衛隊と比軍の往来に関する「円滑化協定(RAA)」締結に向けた交渉開始で一致したほか、同志国を対象とする「政府安全保障能力強化支援(OSA)」を初めて適用し、フィリピンへの沿岸監視レーダー供与で合意した。
RAAは相手国に入国する際のビザ(査証)取得や武器・弾薬を持ち込む際の手続きを簡略化する内容で、日比両政府は24年7月に署名した。日本が「準同盟国」と位置付ける豪州、英国に続いて3カ国目だ。「準同盟国」とは、日本にとって唯一の同盟国である米国に準じ、安全保障分野で協力関係を結ぶ国のこと。フィリピンは日本のシーレーン(海上交通路)の要衝に位置し、日比両国は共に米国の同盟国だ。日本は中国を念頭にフィリピンとの「準同盟」を強化する必要がある。
中国は沖縄県・尖閣諸島周辺で領海侵入を繰り返し、操業中の日本漁船に接近するなどの危険な行為にも出ている。フィリピンと領有権を争う南シナ海では、中国海警局の船舶がフィリピン側の船に放水銃を使用するなど、さらに過激な行為で地域の平和と安定を脅かしている。こうした情勢の中で日比両国の防衛協力が進むのは当然の流れだと言えよう。
今回の防衛相会談で同盟国・同志国とのつながりを重視したことも評価できる。日本は中国の脅威に対処する上で、日米豪印4カ国の「クアッド」や日米韓などの枠組みを重視してきた。24年4月には初の日米比首脳会談も行われ、3カ国の海上保安機関による合同訓練など、海洋安全保障協力の強化で一致した。米国は24年11月、フィリピンと機密情報を共有する軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を締結するなど米比間の軍事協力も進んでいる。
対中抑止力の向上を
オランダ・ハーグの仲裁裁判所が16年7月、中国は南シナ海に関して「歴史的権利を主張する法的根拠はない」との判断を下したにもかかわらず、中国はこの判決を「紙くず」と切り捨てている。
「力による現状変更」を目指す中国に対し、平和を守り抜くには抑止力を向上させる以外にはない。