トップオピニオン社説露の侵略3年 拙速な停戦合意は避けよ 【社説】

露の侵略3年 拙速な停戦合意は避けよ 【社説】

ロシアがウクライナ侵略を開始して24日で丸3年を迎える。戦争は長期化の様相を深めている。昨年8月、戦局挽回を目指し、ウクライナ軍がロシア西部クルスク州への越境攻撃を開始した。当初は優勢に戦いを進め約1300平方㌔を制圧したが、反攻に出た露軍によってその多くが奪い返されてしまった。

米露大統領が電話協議

主戦場の東部ドネツク州でもウクライナ側の苦戦が続く。露軍は無人機などでウクライナの都市部や発電所などへの攻撃を繰り返し、民間人の犠牲が増大。電力不足など生活への不安も強まっている。一方、ロシア側も北朝鮮の兵士を戦場に投入するなど兵員の不足が深刻化しており、戦車などの武器や弾薬の不足も報じられている。だが少しでも有利な形で停戦協議に臨もうと、両国ともに戦闘を止めようとせず、戦争被害はさらに増えることが懸念される。

そうした中、早期停戦実現を大統領選の公約に掲げていたトランプ米大統領の政権が発足。ロシアのプーチン大統領との電話協議で、戦争終結に向け直ちに交渉を開始することで合意した。それを受けた米露高官級協議で、停戦交渉に当たる高位チームの設置なども決まった。

早期停戦に拘(こだわ)るトランプ氏は早い時期の米露首脳会談開催に意欲的だが、ロシアとの拙速な交渉には問題が多い。一刻も早い停戦は誰しも望むところである。だがロシアは、占領しているウクライナ東・南部4州の領有や、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟阻止と大統領選実施などを交渉の条件に掲げており、要求が満たされねば戦争継続も厭(いと)わぬ覚悟だ。

一方、ウクライナは奪われた領土の回復を目指しており、到底ロシアの要求には応じられない。英仏など欧州諸国は停戦状況を監視する平和維持部隊(欧州軍)創設を検討しているが、ロシアはNATO軍の展開に強く反対している。

かように話し合いの前提となる条件を巡り各国の思惑や利害が錯綜(さくそう)、相違している。だがトランプ氏が、当事国のウクライナや欧州諸国を無視し拙速に対露協議を進めれば、各国の対立は表面化し足並みも乱れ、侵略国ロシアを利するだけである。

ミュンヘン安全保障会議で岩屋毅外相が述べたように「ロシアが勝者になる終わり方であってはなら」ず、国際の正義と法秩序に則(のっと)った停戦の実現でなければならない。「力による現状変更」を認め、ロシアの侵略を追認正当化するような合意は、台湾の武力制圧を目論(もくろ)む中国をはじめ世界中に誤ったメッセージを送ることにもなる。ウクライナを支援してきたわが国の立場からも認めることはできない。

休戦期間設け大統領選を

関係各国が合意点を見いだし、実行可能性ある停戦協定の締結や永続的な和平実現へと結び付けるには、時間を要しても慎重な検討がなされるべきだ。当面少しでも犠牲を増やさぬよう、例えば休戦期間を設け、その間ロシアの要求に応じウクライナで大統領選を実施することも一考ではないか。ただし親露派候補の当選を狙いロシアが選挙介入する恐れがあり、その排除が絶対に必要だ。

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