トップオピニオン社説エネ基本計画 脱炭素電源で自給率アップを 【社説】

エネ基本計画 脱炭素電源で自給率アップを 【社説】

政府は閣議でエネルギー政策の中長期的な指針となる「エネルギー基本計画」を決定し、二酸化炭素(CO2)を排出しない原発を「最大限活用する」方針を明記、再生可能エネルギーの割合を4~5割程度に引き上げる目標も設定した。エネルギー安全保障の視点からも妥当な政策だ。

次世代革新炉利用を

基本計画改定は約3年ぶり。「安全性を大前提に経済効率性の向上と環境への適合を図る」ことも盛り込んだ。

ロシアのウクライナ侵略以後、世界的にエネルギー価格が高騰する状況へとつながっている。わが国はエネルギー資源のほとんどを輸入に頼っており、エネルギー自給率は2019年時点で12・1%。30年までに30%程度を目指しており、ぜひ実現させたい。

また今後の人類文明は、宇宙開発、AI(人工知能)、海中探査などを支えるのに前世紀までは考えられなかった莫大(ばくだい)なエネルギーが必要だ。欧米諸国が原発回帰する中、わが国も安全性の高い次世代革新炉(革新軽水炉、高速炉など)の開発を積極的に推進すべきだ。

再エネでは、洋上風力発電と太陽光発電が有力な発電源として設置されている。ただし「風力」では、海上の風車の設置場所を巡る観光業者との間の軋轢(あつれき)や、資材価格の高騰で設置が進まない所が出ている。

また「太陽光」でも、森林伐採が必要なことから環境悪化や災害発生に対する懸念が生まれ、パネルの設置に弾みがつかないでいる。この悪条件をクリアするには今後、わが国の風土に合った風力発電や太陽電池の技術革新が必須だ。

一方、水素発電など化学反応を利用した発電方法の開発が進み、既に家庭の電気利用などで実用化している所もある。大容量の電気が必要な工場での利用を可能にすれば、夏や冬の電力不足の解消につながろう。電力の安定的供給のためには企業の先行的な設備投資が必要だ。

わが国のエネルギー政策は戦後、化石燃料を優先したが、その後、エネルギー資源確保の点から軽水炉の原発を採用。さらに1960年代半ばからは積極的に環境問題に対処し、CO2排出がほとんどない原発、特に高速増殖炉の開発を手掛けてきた。しかし、核燃料サイクルなど新しい科学技術に対するチャレンジを成功させることができなかった。

海外の脱炭素化に貢献を

その反省もあって、今日、エネルギーおよび環境問題の両方の解決をにらみながら、再エネ技術の開発、また欧米各国と連携しながらの核融合発電の実現を目指している。

今回の基本計画で、戦後エネルギー政策の一貫性を改めて確認させられた感がある。その内容をグレードアップする方向へ進めたい。

基本計画では足元の電力需給も予断を許さない中、「非効率な石炭火力を中心に発電量を減らしていく」と化石燃料の扱いに言及した。

また、火力に依存する東南アジア各国に対しその脱炭素化に協力するとしている。ぜひ貢献したい。

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