トップオピニオン社説10~12月期GDP 成長継続も喜べぬ消費減速【社説】

10~12月期GDP 成長継続も喜べぬ消費減速【社説】

2024年10~12月期の実質国内総生産(GDP)速報値は、3期連続のプラス成長になったが、内需の柱である個人消費は前期比0・1%増と微増にとどまり、前7~9月期の0・7%増からさらに減速した。

歴史的な賃上げは続くものの、物価高の継続に家計の節約志向が依然根強く、成長には力強さが見られない。世界経済の先行きにはトランプ米大統領の関税政策など不安要因が影を落とし、楽観できない状況だ。

輸入落ち込みで押し上げ

10~12月期GDP速報値は、実質で前期比0・7%増、年率換算では2・8%増と、民間シンクタンク10社による予測(平均で0・3%増、年率1・1%増)を上回る数値だった。

成長を牽引(けんいん)したのは、企業の設備投資と外需である。設備投資は0・5%増と2期ぶりのプラスで、政府が経済安全保障の観点から支援を強化している半導体製造装置向けや、デジタル分野への投資がそれぞれ旺盛だった。

外需は、輸出が1・1%増と3期連続のプラスで、統計上は輸出に計上されるインバウンド(訪日客)消費もプラスに寄与した。もっとも、成長率への寄与度で見ると、輸出の0・2%に対し輸入が0・5%で、輸入の落ち込み(2・1%減)が成長率を押し上げた形である。

内需全体の寄与度はマイナス0・1%で、要するに、10~12月期の成長は外需、中でも輸入の減少によって押し上げられたものといえ、決して喜べる内容ではない。輸入の減少は内需とりわけ個人消費の弱さを改めて浮き彫りにした。

しかも、さらに悪いのは3期連続の成長とはいえ、GDPの5割以上を占める個人消費が4~6月期の0・9%増から、7~9月期0・7%増、10~12月期0・1%増と伸びを落とし、勢いをなくしている点だ。

6月に始まった定額減税の政策効果が薄れたことに加え、コメや野菜などの値上がりや、電気・ガス代の負担軽減策の終了が家計を直撃し節約志向の高まりを招いているからである。7~9月期では認証不正問題で落ち込んだ自動車販売の反動増や、南海トラフ地震臨時情報などによる備蓄需要が消費を支えたが、こうした要因が剥落(はくらく)したこともある。

電気・ガス代の政府補助は今年1月から再開し、異常な高騰が続いたコメに対しても備蓄米の放出が決まり、政策の誤りによる影響は改善されそうだが、電気・ガス代補助では厚みが以前より減ったため心もとない面もあり、どこまで効果があるか。

それだけに、春闘での賃上げに一層期待がかかる。政府には「物価高を上回る賃上げ」の実現に向け、賃上げ環境の整備と物価高の抑制に本腰を入れて取り組んでもらいたい。

物価高の抑制に努めよ

世界経済の先行きについて、大きな懸念はやはりトランプ政権の関税政策などの影響だ。関係企業の輸出戦略やサプライチェーン(供給網)の見直し、収益の悪化から好調な設備投資にも悪影響が出かねない。そうした影響を最小限に食い止めるためにも物価高抑制と個人消費の回復に努めたい。

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