トップオピニオン社説備蓄米放出 早期にコメ価格の安定を 【社説】

備蓄米放出 早期にコメ価格の安定を 【社説】

政府はコメの価格高騰を背景にした政府備蓄米の放出について、売り出し数量など入札の実施概要をきょう公表する。最大で約21万㌧を放出する方針だという。

コメの価格を早期に安定させるとともに、生産基盤の強化にも取り組む必要がある。

農水省が運用指針見直し

備蓄米は不作時などに備え、政府が保有している国内産のコメ。1993年の大凶作の教訓から、95年に制度化された。毎年20万㌧程度を買い入れ、約5年間保管する。2024年6月末時点の在庫は91万㌧だ。

農林水産省は先月、これまで不作や災害の時に限定してきた備蓄米の放出について、円滑な流通に支障が生じた場合にも実施できるよう運用指針を見直した。1年以内に同等同量の国産米を買い戻す条件で売り渡す仕組みだ。

コメ価格の上昇が家計を圧迫していることは論をまたない。24年産米の相対取引価格(全銘柄平均、玄米60㌔当たり)が昨年12月に2万4665円と過去最高を記録。相対取引価格は集荷業者と卸売業者との間で取引される際の価格だ。精米5㌔当たりの平均的な小売価格は3485円で、前年同月比で73・1%高かった。

農水省によると、24年産米の収穫量は前年より18万2000㌧多い679万2000㌧と見込まれる一方、全国農業協同組合連合会(JA全農)など主要集荷業者の集荷数量は24年12月末時点で前年を20万6000㌧下回った。生産コストや輸送費の上昇に加え、一部の流通業者が投機目的でコメを買い占め、在庫が分散していることが価格高騰の原因とみられる。

コメ以外の物価も高騰しているため、賃金の伸びが追い付かず、実質賃金のマイナスが続いている。備蓄米放出によるコメの価格安定が急がれる。もっとも、店頭でコメが品薄となった昨夏の時点で放出を求める意見もあった。

農水省はコメの需給や価格への影響を懸念し慎重姿勢を崩さなかったが、この時に放出していればこれほどの値上がりは避けられたかもしれない。対応が後手に回って家計を苦しめたことは否めない。

とはいえ、備蓄米放出は一時しのぎにすぎない。コメ高騰の背景には、作付面積の減少など生産基盤の弱体化がある。国が主導したコメの生産調整(減反)が1970年から2018年まで行われ、耕作放棄や転作などによってコメの供給力が低下した。さらに国内では、人口減や食生活の変化によってコメ離れが続いている。

輸出拡大で生産強化を

生産基盤を強化するには海外への輸出に力を入れるべきだ。コメとコメの加工品の輸出割合は生産量の0・8%にすぎず、輸出拡大の余地は大きい。生産量が確保されれば、価格の安定にもつなげることができる。また食料安全保障の観点からは、食料危機に陥った場合に輸出していたコメを国内で消費することができる。

さらにコメ農家の高齢化が進み、後継者も不足する中、水田の大区画化を進め、生産性の向上を図ることも求められる。

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