国民民主党が党大会を開催し、夏の参院選では1人区を含め候補者を積極的に擁立し、所得税の課税最低ライン「年収103万円の壁」の引き上げなど「手取りを増やす」方針を打ち出した。政治不信が増して自民、公明両党は少数与党になっており、批判票を吸収する受け皿として勢いを持続できるか正念場を迎えている。
若い世代の支持得る
党首が不倫問題で役職停止処分となり、演壇に立つことができない状況だったが、代表代行らで党大会を乗り切った。昨秋の衆院選では公示前の4倍の28議席を獲得。だが、比例区の候補者が足りず他党に議席を譲っている。その後の各世論調査では野党第1党である立憲民主党の支持率を上回るケースも出ており、これに見合う議席の確保のためには候補者擁立が最大の課題となる。
衆院選での国民民主の躍進は自民に対する政治不信が背景にあることは言うまでもない。自民離れした保守中道層は、共産党と共闘した野党には向かわず、保守的な新党と中道の国民民主に投票先を変えたとみられるのが衆院選の結果だ。地方首長がトップに立つ日本維新の会はピークアウトした。
国民民主の年収の壁を178万円へ引き上げる主張は、コロナ禍後の資材不足、ロシアのウクライナ軍事侵攻、記録的な円安が重なり、物価が高騰していることから共働きをする庶民に期待されている。人手不足からアルバイトをする大学生が現場の戦力となり、年収の壁を越える例もある。
学費の支払いが大変な学生や生活の苦しい庶民、あるいは人手不足に悩む業者など弱い立場にある人たちの事情を、世襲議員の多い自民では思い至らない上、「庶民の党」を標榜(ひょうぼう)したはずの公明は自民に追随するだけという不満が多いことを、国民民主の躍進と、その後の支持率の推移は示していると言えよう。
実際、国民民主の支持層は世代別に見れば年収の少ない若い有権者ほど多くなっている。高度経済成長やバブル経済など過去の成功体験の記憶が残る世代に比べ、若い世代ほど日本の生活状況に不安を抱えているのではないか。
また国民民主は「政策本位で与野党を問わず連携する」方針で、少数与党を相手にどれだけ「政策本位」を貫けるかが課題となる。ガソリン暫定税率廃止など減税路線を掲げるなら、行政のムダを指摘し歳出を抑えるための代案が必要となろう。
現在の野党は、2012年末に政権を失った民主党が分裂・離合集散しながら形成されている。立憲民主は衆院選で議席を伸ばしたが、得票はあまり伸びなかった。党名に「立憲」を冠したのは、安保法制反対運動で共産と共闘を組む状況を受けてのことだった。党首を保守的な野田佳彦元首相に代えても左翼・市民運動のイメージが残っている。
「一強」から「多中」に期待
有権者は長く続く自民・公明政権とは別の中道保守の選択肢を求め始めている。「一強多弱」から「多中」へと、均衡ある国会勢力による衆議が行われることを期待したい。