きょうは建国記念の日。神武天皇が橿原の宮で初代天皇に即位された日である。
国の成り立ち、先人たちの歩みに思いを馳(は)せ、今に続くわが国柄の核心について考える日としたい。
国家の統一と安定保つ
神武天皇の即位の日を2月11日とするのは『日本書紀』の記述を基に学者が考証したものである。神武天皇の事績は神話にすぎないとか、戦前の皇国思想の復活だなどとして一部の歴史学者や左翼陣営が反対した。反対運動は国民の支持を得られず影を潜めたが、その影響は今もこの祝日に水を差している。
世界各国には、建国記念日ないしそれに相当する記念日が定められている。米国の独立記念日、フランスのフランス革命記念日がそれに当たる。その国の国柄あるいは民族的なエートスの出発点となった日である。
日本の国柄は、神武建国に始まり悠久の歴史の中で築かれてきた。その中心に万世一系の皇統を受け継ぐ皇室があった。時代ごとに時の政権の担当者は代わっても、それらを超えた権威を保持する天皇が存在し、いわゆる王朝交替もなく皇統が続いてきたことによって、国家としての統一と安定が保たれてきたのである。
昨年10月、国連女性差別撤廃委員会が、女性皇族による皇位継承を認めていない皇室典範の改正を勧告したのは、加盟国の国柄への無知によるものであり、固有文化の否定につながるものである。これに対し、日本政府が「皇位継承の在り方は国家の基本に関わる事項で、わが国の皇室典範について取り上げることは適当ではない」として、国連人権高等弁務官事務所への任意拠出金の使途から同委を除外することを申し入れたのは当然である。
わが国皇室が世界最古の皇室として存在し続けているのは、男系によって皇位が連綿と継承されてきたことが大きい。そこには先人たちの苦心があった。皇統の危機は何度か訪れるが、それを救ったのが世襲宮家だった。118代後桃園天皇が皇子のないままに早世した時、閑院宮3代目の兼仁(ともひと)親王が皇嗣に立てられて光格天皇となった。その血筋は今上天皇に受け継がれている。
閑院宮家は、男系継承維持のため新井白石の建言によって創設された宮家である。これらの史実、先人の苦心を顧みれば、戦後GHQ(連合国軍総司令部)が11宮家を廃止したことが、いかに歴史や国柄を無視した暴挙であったかが分かる。
痛恨の史実を思い起こせ
国会では皇族数の確保策に関する協議が再開された。額賀福志郎衆院議長は、政府の有識者会議が示した①女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持②旧宮家の男系男子が養子として皇籍に復帰――の2案に絞って検討を進め、今国会中に結論を得たいと表明した。
男系継承の歴史的な背景とりわけ先人たちが苦心して守ってきた史実をよく踏まえて議論を深めていくべきである。なお意見が割れているという男系男子の皇籍復帰は、GHQによる宮家廃止という痛恨の史実を改めて思い起こす必要がある。