トップオピニオン社説日米首脳会談 「新たな黄金時代」を目指せ 【社説】

日米首脳会談 「新たな黄金時代」を目指せ 【社説】

石破茂首相とトランプ米大統領の日米首脳会談が米ワシントンで開かれた。首脳間の信頼関係構築や強固な日米同盟関係の再確認、また米側が新たな関税を賦課し、防衛費増額など厳しい要求を日本に行うかどうかなどが主な焦点であった。

入念な準備重ねた日本側

会談は和やかな雰囲気の中、順調に進んだ。会談後の記者会見でトランプ氏は、日本を守るため米国の抑止力を提供すると強調。共同声明でも、米国の核兵器を含む戦力で日本を守る「拡大抑止」のさらなる強化や、日米安全保障条約第5条の沖縄県・尖閣諸島への適用が明記され、対日コミットメントが再確認された。

「自由で開かれたインド太平洋」の堅持や台湾海峡の平和と安定の重要性、中国の「力や威圧によるあらゆる一方的な現状変更の試みに反対」することも声明に盛り込まれた。日本製鉄のUSスチール買収問題は「買収ではなく投資」で合意した。厳しい対日要求が出ることもなく、両首脳は「日米の新たな黄金時代」を築くため経済や安全保障で協力を深めることを確認し、会談は成功したと言える。

会談に当たっては、安倍晋三元首相と石破首相との個性や政治スタイルの違いに加え、昨年石破首相が訪米を模索したがトランプ氏側から断られた経緯もあり、首脳間の意思疎通に不安が呈されていた。だが会談では互いを称(たた)え、トランプ氏が緊張気味の石破首相に気配りを見せ全体の流れをリードし、対話に不協和音は生じなかった。

日本側が米側の出方を想定し、入念な準備を重ねてきたことも功を奏した。貿易不均衡解消にこだわる米側に対し、石破首相が日本の対米投資実績や投資額の1兆㌦規模への引き上げなどをアピール。米国産液化天然ガス(LNG)の輸入拡大方針も示し、米国の雇用拡大や経済成長に貢献していく姿勢を積極的に打ち出したことが米側に評価されたことは間違いない。

またパレスチナ自治区ガザを米国が所有するとのトランプ氏の発言や、政府組織・職員の大幅削減を進めるイーロン・マスク氏の動きを巡り、トランプ政権は強い批判に晒(さら)されている。その最中の首脳会談を失敗させるわけにはいかない米側の苦しい事情も日本側に有利に作用した。もっとも、石破首相が自らのカラーを完全に封印し、事務当局の用意したシナリオと発言要領に従って対応したことが、会談を成功に導いたとみることもできる。

だが初回の会談は双方のいわば手合わせであり、互いの本音のぶつかり合いはこれからだ。先例を覆す新たな政策を矢継ぎ早に打ち出しているトランプ政権が、日本に厳しい要求を投げてくる可能性は否定できない。

指導力を発揮できるか

現にトランプ氏は日本の防衛費のさらなる増額への期待に言及。貿易赤字解消のため、関税発動の検討に入っていることも認めている。日米交渉が厳しい局面を迎えた時、官僚や側近に委ねず、石破首相は国家のリーダーとして強い指導力を発揮できるであろうか。その手腕に期待しつつ、注意深く見詰めていく必要がある。

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