測位衛星「みちびき6号」を搭載したH3ロケット5号機が、鹿児島県・種子島宇宙センターから打ち上げられ、同衛星を予定の軌道に投入。打ち上げは成功した。初号機の打ち上げ失敗後、2号機から4機連続の成功である。機体の構成を変えられるH3は2025年度から、最も安価な構成や打ち上げ能力最大の構成など新たな打ち上げに臨む。着実な成功を期待する。
最も安価な打ち上げも
「成功事例を一つ重ねたことで、信頼性をさらに増すことができた」――打ち上げ後の記者会見で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の山川宏理事長がこう語るのも肯(うなず)ける。
期待された23年3月の初号機打ち上げで、信頼性の高いH2Aで使用した第2段エンジンが着火しないという「まさか」の失敗で先進光学衛星「だいち3号」を失い、信頼をも失った。
昨年2月の2号機打ち上げでは、本来の使命である実用衛星を搭載できず、ダミー衛星で性能を確認するという屈辱を味わいながらも見事に成功。その後も3号機が7月、4号機が11月と短期間のうちに、それぞれレーダー衛星「だいち4号」、Xバンド防衛通信衛星「きらめき3号」を搭載して成功させた。それに続く今回の成功である。
25年度からは、これまでの第1段の液体エンジン2基、固体補助ロケット2本の構成から、H3開発の目的であり「売り」とする最も安価(H2Aの半分程度の約50億円)な液体エンジン3基のみや、衛星打ち上げ能力が最大(欧州の「アリアン5」ロケットなどと同等の静止軌道投入へ6・5㌧以上)となるエンジン2基、補助ロケット4本といった構成の打ち上げを予定している。
H3もH2Aと同様、打ち上げサービス事業が三菱重工業に移管される計画で、さまざまな打ち上げ需要に対応できるラインアップの拡充を進める。
H3は50号の打ち上げで退役するH2Aの後継基幹ロケットとして今後20年を見据える。国産実用衛星のほか、新型の宇宙ステーション補給機(HTV-X)の打ち上げや米主導の月探査「アルテミス計画」での物資運搬なども担う一方、国際市場での商業衛星打ち上げ受注をも目指している。山川理事長は「(4号機までと)大きく変わったものではないが、データをさらに蓄積できている」とも語った。それらを生かし新たなステップへ、さらに成功を重ねてもらいたい。
測位精度高め国際貢献を
「みちびき」は数センチ単位の精密測位ができる日本版GPS(全地球測位システム)を実現する衛星。10年に初号機が打ち上げられ、18年から4基体制でサービスを開始している。政府は米国のGPSなどの補完を必要とせず、みちびきのみで常時測位を行える7基体制を25年度中にも実現する計画だ。
実現すると、スマートフォンやカーナビなどを使ったユーザーの測位精度は現状の5~10㍍から1㍍まで向上する。災害時や緊急時の公共情報の提供など社会インフラとしての期待は高い。災害の多い東南アジアでも実証実験が実施されており、国際貢献に一層役立ててほしい。