トップオピニオン社説道路陥没 インフラ老朽化対策の強化を【社説】

道路陥没 インフラ老朽化対策の強化を【社説】

埼玉県八潮市で道路が陥没してトラックが転落する事故が発生した。

74歳の男性運転手の救助活動が続いているが、陥没箇所への水の流入などのため作業は難航している。早期の救出と復旧が求められる。

下水道管の破損が原因か

陥没の原因は、道路の下を通る下水道管の破損とみられている。下水道管が腐食して穴が開き、その穴に土砂が流れ込むことで地中に空洞ができていた可能性がある。

県などは運転手救出のため、がれき撤去などを続けている。現場では内部に重機を入れるためのスロープが完成したが、あふれ出る水を排水しながら作業を進めている状況だ。事故の発生から、生存率が急激に下がるとされる72時間が既に過ぎている。難しい作業だが、一刻も早く救い出してほしい。

この下水道管は、埼玉県内12市町から汚水が集まり下水処理場につながる太い管路だったという。政府は全国の下水道管理者に対して類似する箇所の緊急点検を要請した。

事故現場周辺は警戒区域となり、避難所が開設された。県は周辺12市町の住民約120万人に下水道の使用を控えるよう要請した。住民は洗濯や入浴などの制限を余儀なくされている。インフラの老朽化によって引き起こされる事故が、住民生活に大きな影響を与えるケースもあることが浮き彫りになったと言えよう。

インフラの老朽化問題が注目されるようになったのは2012年12月、山梨県の中央自動車道上り線の笹子トンネルで、重さ1㌧以上のコンクリート板が約130㍍にわたって約330枚落下し、9人が死亡する事故が発生したためだ。事故を受け、政府は道路法を改正し、道路管理者ごとに異なっていた保守点検の基準を統一。橋やトンネルの管理者には5年ごとの点検が義務付けられた。人工知能(AI)の活用などで点検作業の効率性を高めてほしい。

ただ危険を防ぐには、全国的な補修も求められよう。石破茂首相は施政方針演説で「新時代のインフラ整備」として脱炭素電源の整備や次世代燃料供給拠点の拡大、AIなどをつなぐ情報通信ネットワークの構築などを掲げたが、既存のインフラへの目配りも必要だ。首相が重視する防災対策にも結び付くものだと言える。

積極財政で安全守れ

国土交通省によれば、30年3月までに全国の下水道の約16%が建設後50年以上となる。トンネルは約36%、橋は約55%に上るという。インフラの老朽化対策は国や地方自治体にとって大きな課題だ。今のままでは老朽化を原因とする事故が、いつどこで発生してもおかしくない。今回の事故も陥没の規模が大きければ、もっと多くの車両が転落していたことも考えられる。

しかし、国の予算ではインフラ整備に関する公共事業費が不十分だ。国民の命や安全を守るには、積極的な財政出動を行うべきではないのか。

予算の無駄遣いは避けなければならないが、真に必要な国債発行を躊躇(ちゅうちょ)することがあってはなるまい。

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