米国の首都ワシントン近郊のロナルド・レーガン空港付近で着陸のため滑走路に進入しようとしていた旅客機と軍用ヘリコプターが空中衝突して川に墜落した。乗客乗員67人は全員死亡したとみられている。
信じられないような悲惨な事故だ。こうした航空機の大事故が世界中で相次いでいる。惨事を防ぐため、米当局は原因究明に全力を挙げてほしい。
乗客にフィギュア選手も
衝突したのはアメリカン航空の子会社が運航する旅客機と、南部バージニア州の基地所属の軍用ヘリ。旅客機には乗客60人と乗員4人の計64人が搭乗し、この中には中西部カンザス州で行われたフィギュアスケートの全米選手権を終えた選手ら十数人が含まれているという。一方、ヘリは兵士3人による訓練飛行中だった。
トランプ米大統領は事故原因は分からないとしつつも「明らかにヘリは間違った時間に、間違った場所にいた」と指摘。ヘリについて「何かの理由で(同じ高度で旅客機の方へ)進み続けた。最後に少し旋回したが、手遅れだった」と述べた。米運輸安全委員会(NTSB)は30日以内に予備的な報告書を提出すると明らかにした。
本格的調査はこれからだが、ヘリのパイロットの経験が不十分だったとの見方が出ている。低空飛行中に川の水面に注意を奪われたとも指摘されている。早急な原因究明が求められる。
日本でも1971年に岩手県で全日空機と自衛隊機が空中で衝突し、全日空機の乗客乗員162人が全員死亡する大惨事があった。この事故を受け、自衛隊は民間機の航路や航行時間帯以外で訓練するようになった。
ただ昨年1月には、東京・羽田空港の滑走路で元日に起きた能登半島地震の被災地に向かおうとしていた海上保安庁の航空機と日本航空機が衝突炎上する事故が発生。海保機の乗員5人が死亡した。日航機の乗客乗員計379人も犠牲となった可能性がある。国の運輸安全委員会は中間報告書で、滑走路への進入許可を得たと認識した海保機と、進入を見ていなかった管制官、衝突直前まで海保機に気付かなかった日航機の3者の対応が重なって事故が起きたとの見解を示した。
さらに昨年末、韓国南西部・全羅南道の務安国際空港で旅客機が着陸に失敗して炎上し、179人が死亡した。鳥と衝突する「バードストライク」が起きてエンジンが停止し、電源供給も止まったとされている。旅客機が激突した滑走路周辺の構造物は、コンクリートの基礎を盛り土で覆った強固なもので被害を拡大したとみられている。
管制官不足の解消を
今回の事故が起きた際、管制塔では2人の管制官が担当する業務に1人で当たっていた。米国では管制官の不足が続いており、近年は滑走路で衝突の恐れがある航空機の異常接近も何回か生じていた。
航空業界には、一つのミスが起きても幾つもの安全対策が機能することで事故を未然に防ぐ「フェイルセーフ」という考え方がある。米当局はフェイルセーフが働くよう管制官の不足を解消すべきだ。