日本共産党が志位和夫氏から田村智子氏へと委員長を23年ぶりに交代して1年が経過した。共産党初の女性委員長として注目されたが、機関紙「しんぶん赤旗」の部数減少など党勢衰退と、昨年衆院選で200以上の小選挙区に候補者を擁立しながら議席を減らすなど「独自のたたかい」を再び繰り返す結果に終わっている。
衆院選で議席減らす
田村氏に委員長が交代しても共産党の共産主義体制を展望する綱領路線と党を無謬(むびゅう)とする上意下達体質は不変である。共産党が党で働く人のための就業規則を労働基準監督署に提出していない事例が福岡県で明るみに出ると、田村氏は党で働く職員は「いわゆる労使関係とは異なる」との見解を示した。
党員は革命家であり、資本家から賃金を貰(もら)って働く労働者とは違うという前衛意識を抱いての発言とみえるが、労働者のための党であると主張しながら矛盾が表れた典型だ。党勢は衰退しており、挽回を目指すものの目標が高くて挫折を繰り返す悪循環は、田村氏が委員長になっても続いている。
昨年、共産党は「しんぶん赤旗」で自民党派閥の政治資金不記載問題のキャンペーンを張り、他の野党と共に自民党を追及。岸田文雄首相は事実上の退陣となる総裁選不出馬を余儀なくされた。
だが、その前に野党共闘の再構築を図り、東京都知事選で立憲民主党の参院議員を辞して立候補した蓮舫氏を応援。しかし、これが裏目に出て、2位争いでネット選挙を戦った石丸伸二前広島県安芸高田市長の後塵(こうじん)を拝する結果に終わった。蓮舫氏の惨敗は立民代表選に影響し、「もう“立憲共産党”と言わせない」と断言した野田佳彦氏が代表に選出された。
田村共産党が初めて挑んだ衆院選は、野党共闘を瓦解(がかい)させる213小選挙区への候補擁立となり、沖縄1区を除き「独自のたたかい」に舞い戻った。議席は2議席減の8議席、比例区の総得票は336万2966票で350万を割った。自民の政治資金問題を追及した野党の中で負け組だった。
原因は独善的な綱領路線、上意下達の組織体質と解することができよう。共産党は10、11日に第4回中央委員会総会を行い、決議文を決定したが、昨年の衆院選は前回(2021年)と比べ、「党員数は93・2%、日刊紙読者は88%、日曜版読者は84・9%でたたかった」と記している。さらに「宣伝・組織活動はそれ以上に落ち込み、『選対体制がつくれない』などの事態も生まれている」と報告している。多くは泡沫(ほうまつ)候補であり供託金を国庫に納めている。
他党との交渉力にも衰え
また4中総では、今年の参院選、東京都議会議員選挙に向けてアンケートで有権者と対話する「要求対話・アンケート」を500万人に行う運動を打ち出し、日刊紙・日曜版合わせて90万部になった機関紙について「100万人の読者回復」「『赤旗』危機打開10億円の特別支援募金」を訴えることを決めた。
党勢の衰えから、共産党の他野党に対する交渉力も衰えるとみられる。