衆参両院で各党代表質問が行われ、与野党が論戦を交わしている。新たに東京都議会自民党会派の政治資金パーティー収入不記載問題が明るみに出たことが影響し、石破茂首相は核心を避ける答弁や受け身の姿勢が目立っている。
自民都議は説明尽くせ
代表質問の先陣を切った最大野党・立憲民主党の野田佳彦代表は「民主主義、熟議の真価が問われる国会。忘れてはならないのは『政治とカネ』を巡る実態解明だ」と詰め寄った。政治資金不記載については「自民の派閥だけに限らず、地方組織に蔓延(まんえん)している疑いが高まっている」と指摘。自民の各都道府県連に対する党内調査を「わずか1週間足らずの調査で、おざなりだ」と批判した。首相は「現時点でほかの不記載事案は把握されていない。再調査はいまは考えていない」と答弁した。
首相は「大切なことは、二度と同様の事案を繰り返さないということ。引き続き党として政治改革の議論を率先して行う」と、立民の水岡俊一参院議員の質問に答弁した。都議会自民党会派を巡っては、都議会議長が辞任したほか、幹事長経験者6人を6月の都議選で公認しない方針だ。役職辞任や非公認だけでは都民・国民は納得しないだろう。都議は使途や不記載になった経緯について説明責任を果たさねばならない。首相の強いリーダーシップが求められる。
今国会で最大の焦点は予算案の修正だ。少数与党の自民、公明両党だけでは衆院通過できない。野党の要求を反映する必要に迫られている。野田氏は給食無料化やガソリン税見直し、社会保険料軽減を主張。日本維新の会の前原誠司共同代表は、私立を含めた高校授業料無償の早期実現を求めた。
維新は4月から教育支援を拡大し、その後、無償化の所得制限撤廃を行う2段階の案を打ち出している。首相は「教育の質の向上や地方自治体が独自で実施する支援とのバランス、安定的な財源確保といった論点も考える必要がある」と慎重な発言にとどめた。現行の国の就学支援金制度は、年収910万円未満の世帯で公立高校の授業料が実質無償となる。完全無償化で公立高校に進学する動機が薄れ、学習意欲が低下する生徒が出る可能性、さらに私立の受験激化への懸念は払拭できない。
今国会のもう一つの大きなテーマは、選択的夫婦別姓導入の是非だ。立民の亀井亜紀子衆院議員は「賛成の方向で早くまとめてほしい」と首相に迫った。首相は「家族の形態や子供への影響などさまざまな点を考慮の上、国会において建設的な議論が行われ、より幅広い国民の理解が形成されることが重要と考えている」と慎重姿勢を示した。
旧姓通称使用拡大で十分
「総裁になる前は(選択的)夫婦別姓にすべきだと思っていた」という首相はインターネット番組で、各種世論調査で同姓維持と旧姓の通称使用拡大の合計が別姓容認を大きく上回ることを踏まえ、「どちらの考え方にも偏れないとすれば、折衷案もあり得べしと思っている」と述べた。旧姓の通称使用を拡大すべきだとの認識を示したことは評価できる。