トップオピニオン社説日銀追加利上げ 妥当な判断、引き続き慎重に 【社説】

日銀追加利上げ 妥当な判断、引き続き慎重に 【社説】

日銀は金融政策決定会合で昨年7月以来の追加利上げを決めた。政策金利を0・25%程度から0・5%程度へ、約17年ぶりの水準に引き上げる。最近の経済・物価動向から妥当な判断と評価したい。

今後の利上げについても内外の動向を見極め、植田和男総裁の会見の通り、「予断を持たずに」慎重に判断し金融正常化を進めてもらいたい。

今春闘も賃上げに勢い

植田総裁は会合後の記者会見で、利上げを決めた理由について今年の春闘で昨年に続く高水準の賃上げが実現する公算が大きくなったことなどを挙げ、「(経済・物価の)見通しが実現していく確度が高まっている」と説明した。

今春闘の賃上げについて、政労使とも5%以上の引き上げで見解がほぼ一致しており、初任給を大幅に引き上げる企業も目立ってきた。

食料品を中心とした生活必需品の値上げは依然として続き、ガソリン価格も政府の補助縮小もあり上昇基調をたどり、実質賃金のプラス定着がおぼつかない。日銀が描く「賃金と物価の好循環」は実感が乏しいのが実情だが、今春闘での賃上げに向けた「モメンタム(勢い)」は間違いないであろう。

憂慮されたトランプ米新政権の「初動」も、中国やカナダ、メキシコへの高関税措置の即時発動が見送られ、「おおむね予想の範囲内にとどまり、大きな市場の混乱も発生していない」(植田総裁)からである。

今後の金融政策運営について、植田総裁は経済・物価動向が想定通りに推移すれば利上げ路線を継続する方針を表明したものの、利上げのペースやタイミングに関しては「予断を持っていない」と述べた。

トランプ政権が掲げる高関税政策が「規模や広がりについて非常に不確実性が高い」からで、毎回の会合で判断する考えを強調した。当然である。

金融正常化を進めるに当たって気になるのは、日銀がどの程度まで金利を引き上げるのかである。金利の引き上げは家計や企業にとり預金や株式など金融資産の利回りが改善して収入が増えるなどプラスの影響が期待される半面、住宅ローンや企業向け融資の金利が上がり、多額の負債を抱えている場合などは負担が増す恐れもある。

総裁は景気を刺激することも冷ますこともない「中立金利」までは「まだ相応の距離がある」と述べ、利上げの余地が残っていると指摘した。中立金利は1~2・5%程度と推計されているが、妥当なところだろう。

対話重視の姿勢今後も

一番の懸念は、トランプ大統領が高関税政策を実施した際の影響である。米国のインフレ再燃を招き、円安・ドル高が進行すれば、日銀はさらなる利上げを迫られる可能性がある。一方、報復関税の応酬による貿易戦争の激化によって、世界経済の下押しリスクが高まれば、利上げ路線が停止に追い込まれる事態になりかねない。

今回の利上げでは、副総裁や総裁が事前に講演などで示唆し、市場に大きな動揺は見られなかった。対話重視の姿勢は今後も続けてほしい。

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