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フジテレビ 芸能界含め膿を出し切れ 【社説】

SMAPのメンバーとして活動していた当時の中居正広さん=2013年、 東京都千代田区
SMAPのメンバーとして活動していた当時の中居正広さん=2013年、 東京都千代田区

フジテレビの企業体質への疑念が深まっている。人気タレントが起こした女性との性トラブルとその後の対応を間違ったことで、企業広告が差し止められるなど、民放でかつてない事態に陥っている。局は27日、記者会見する予定だが、トラブルへの幹部社員の関与や経営責任を明確にし信頼回復のため、膿(うみ)を出し切って企業体質を一新する覚悟で臨むべきだ。

火に油注いだ記者会見

多数のレギュラー番組を持ち「国民的MC」と呼ばれた中居正広さんが女性トラブルを起こしたのは2023年6月だった。中居さんはトラブルを認め示談したことを明らかにした。局は発生直後に把握したという。

公共財の電波を使うテレビ局には高い倫理感覚と人権意識が求められる。示談が成立したとしても、社会的責任としてトラブル把握の段階で調査を行い、中居さんに対し一定期間の出演停止などの対応を取るべきだった。昨年末、週刊誌報道でトラブルが発覚するまで事実を伏せていたのだから、人権よりも企業利益を優先させる体質があると批判されても仕方あるまい。

その上、発覚後の対応も不適切だった。特に、港浩一社長が17日に行った記者会見が火に油を注いだ。参加を一部メディアに限定し、動画撮影も認めなかった。しかも質問にはほとんど答えずじまい。事態の深刻さに気付いたのは、CMを差し止める企業が続出してからだった。

結局、弁護士による第三者委員会が調査し、3月末までに報告書をまとめることになった。焦点はトラブルに幹部社員の関与があったかどうか。週刊誌は女性アナウンサーを接待に利用する社風があったと指摘する。その点も調査する必要がある。

一方、中居さんの対応にも首をひねる。今年に入って、自身の公式サイトで示談成立で芸能活動は「支障なく続けられることになりました」と表明した。しかし、23日になって、同サイトで「全責任は私個人にあります」と引退を発表した。

トラブル相手のプライバシー保護など対応に難しさがあったことは理解できる。しかしトラブル直後、自主的に活動の一時停止を決断することはできなかったのか。発覚後、一度も表に出ず突如引退したことには「逃げた」との失望の声も聞かれる。

芸能界で活躍し特別視されているうちに慢心したのかもしれない。他の芸能人も人気が高まると自分を特別視するようになりがちだ。もっと責任の重さを自覚すべきだ。芸能界には性関係を軽く考える風潮が残る。この膿も出し切る必要がある。

経営陣刷新は避けられぬ

テレビは報道機関であるとともに文化の担い手である。偏向報道が国民の信頼を失う一因となっていることに加え、バラエティー偏重もテレビ離れを加速させている。これはどの局にも言えることだが、特にかつて「軽チャー」路線で視聴率を稼いだフジテレビには、真面目さをからかう社風が残り、それが女性アナウンサーの接待利用という悪習につながっているとの指摘もある。中居さんのトラブルを生む社風があったとすれば、それを放置してきた経営陣の刷新は避けられない。

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